1991年
イタリアンライグラス(Lolium multiflorum LAM.)緑汁液を直接あるいはアルカリ処理後に添加して調製した稲わらサイレージの栄養価
日本草地学会誌
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- 巻
- 37
- 号
- 2
- 開始ページ
- 203
- 終了ページ
- 212
- 記述言語
- 英語
- 掲載種別
- DOI
- 10.14941/grass.37.203
- 出版者・発行元
- 日本草地学会
イタリアンライグラスを破砕および圧搾して得た緑汁液(GJ)を,直接あるいはアルカリ処理後に稲わら3に対して7の割合で混合してポリエチレンバックに詰め込みサイレージを調製した。アルカリ処理は,混合する稲わら乾物当たり4%になるようにNaOHあるいはNH_3をGJに加えて行った。対照として水のみを混合したサイレージを調製した。以上4種類のサイレージとふすまを乾物比で3:1の割合で混合して去勢山羊に給与して消化試験を実施した。なお対照サイレージを給与する場合にはふすまとともに尿素を与えてNH_3処理GJ以外のGJ添加に相当する窒素量を補った。稲わらサイレージの粗蛋白質含量は無処理GJあるいはNaOH処理GJの添加により乾物当たり5.0%から7.9%まで高まり,アンモニア処理GJの添加により25%以上にまで高まった。水を添加して調製した対照サイレージは乳酸含量が少なく酪酸型の発酵品質を示したのに対し,無処理GJを添加したサイレージは乳酸が多く,酪酸をほとんど含まずpHが低いより優れた発酵品質を示した。これに対してNaOH処理あるいはNH_3処理GJを添加すると,サイレージ中の酪酸含量およびアンモニア態N(% TN)が高まりpHが上昇した。水添加サイレージおよび無処理GJ添加サイレージの消化率はほとんど変わらなかったが,山羊の窒素保留は後者を給与した場合の方がやや高い傾向を示した。これらに対しNaOH処理GJを添加したサイレージでは繊維の消化率が有意に高く,山羊の尿中への窒素排泄量が減少して保留量が増加し,また第1胃内容液のNH_3-N濃度および血中尿素態窒素(BUN)濃度が低下した。すなわちアルカリ処理によって繊維の利用性が高まり,第1胃内微生物に対してより多くのエネルギーが供給されて微生物体蛋白質の合成が高まったことが示唆された。NH_3処理GJを添加したサイレージは全成分の消化率および山羊の窒素保留量のいずれについてもNaOH処理GJ添加の場合よりもさらに有意に高い結果を示した。これはNaOH処理GJを添加したサイレージを給与した場合に比し,第1胃内微生物に対して繊維の消化および蛋白質合成に十分な窒素源が供給されたためであろう。
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- ID情報
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- DOI : 10.14941/grass.37.203
- ISSN : 0447-5933
- CiNii Articles ID : 110006410290
- CiNii Books ID : AN00194108