基本情報

所属
広島大学 (名誉教授)
学位
理学博士(1970年11月 広島大学)

J-GLOBAL ID
200901067427466804
researchmap会員ID
1000037635

 

 【主要な研究成果】 

 主要な研究成果は多変量統計解析における理論的な問題を解明したことであり,多変量線形仮説等における検定統計量の最適性,主要な推測統計量の漸近展開とその誤差限界の導出, 種々の多変量モデルにおける高次元モデル選択理論などを取り扱っている.これらの結果を得るため, いくつかの解析的あるいは確率的な工夫がなされている. なお,以下で取り上げる研究成果には,共同研究者との成果も含まれているが,共同研究者名は割愛している. 

 1970 年頃の大きな関心の1つは,多変量線形仮説の検定に対して提案されている 3つの検定統計量のよさを明らかにすることであった.そのため,まず, 特性関数の多変量超幾何関数表示をしている. 次に, その級数表示におけるゾーナル多項式に対してある種の加重和公式を導出したり, 超幾何関数に対して偏微分方程式系を導入したりすることによって特性関数を漸近展開し, これを反転することにより検定統計量の漸近展開を導出している (Sugiura and Fujikoshi (1969), Fujikoshi (1970)). このような解析学的な工夫により, 検出力の比較に成功している.さらに, このアプローチは, 独立性や次元に関する検定問題に対しても適用している. これらの結果と 2006 年頃までの藤越の主要な研究成果は, Siotani and Wakaki (2006, J. Multivariate Anal.) で紹介されている.

 一般に,多変量解析における標本分布は,基礎分布に多変量正規性を仮定しても非常に複雑である.しかし,漸近展開が与えられることにより主要な項の挙動を理解することができ, 推測法に応用できる. 正規性のみならず非正規性のもとで,主成分分析における主成分と寄与率,および,多変量線形モデルにおけるホテリング$ T_0^2 $統計量とウィルクス$ \Lambda $統計量の漸近展開を導出している. なお, 統計量の漸近展開近似の精度はオーダーで評価されることが多いため,その誤差限界を与えることは大変有意義である. そこで, 正規性の仮定のもとで, 成長曲線モデルにおける推定量,線形判別と2次判別の誤判別確率,$ T_0^2 $ 統計量と $ \Lambda $統計量などの漸近近似に対して, その誤差限界を求めた.これらの成果の多くは, 著書 Fujikoshi, Ulyanov and Shimizu (2010), Fujikoshi and Ulyanov (2020) に記載されている.

 その後, 変数選択法の研究を行った. ビッグデータを取り扱う時代を迎え, 大標本高次元での研究が重要 視されるようになったからである. そこで,種々の多変量モデル (多変量回帰,判別,正準相関,主成分, 成長曲線,逆回帰などに関するモデル) に関して追加情報仮説を定式化して,その検定法を開発している. また,これらのモデルに関して AIC 等の情報量規準を与え, 変数選択法を提案している. なお, 次元を含む漸近展開に対して, 大標本高次元での展開表現や誤差限界を与えている. これらの成果の大部分は Fujikoshi, Ulyanov and Shimizu (2010) を参照されたい.

 加えて, 情報量規準の性質について研究した. 多変量回帰モデルにおいて説明変数を選ぶための情報量規準 AIC とCpが提案されていたが,モデル選択型リスクの推定量として偏りがあった. そこで, 正規性のもとで, 偏りを減らした修正情報量規準 MAIC と MCp を提案している (Fujikoshi and Satoh (1997)).さらに, 大標本高次元の枠組においては, AIC や MAIC には漸近一致性があり, BIC には漸近一致性がない場合があることを指摘した (Fujikoshi, Sakurai and Yanagihara (2014), Yanagihara, Wakaki and Fujikoshi (2015)).一般に,大標本のもとでは,AIC や Cp は漸近一致性をもたないことが知られていたので,これは注目すべき結果である.このように AIC が漸近一致性をもち BIC が漸近一致性をもたないという結果は, 他の場面 (大標本高次元の枠組における主成分分析, 多変量回帰分析, 判別分析での次元の推定) でも指摘され, さらに, AIC と BIC がそれぞれ漸近一致性をもつための条件を与えている (Fujikoshi and Sakurai (2016), Bai, Choi and Fujikoshi (2018)).

 最近, 著者は計算量を減らした変数選択法について研究している. これは,AIC 等に基づく変数選択法は,選ぶべき変数が多くなると計算量が膨大になるという欠点があることによる.そこで,これを回避するために, KOO (kick-one-out) 法についても研究した. そして,多変量回帰や判別分析モデルに関して,この方法を用いた変数選択が, ある種の条件の下で高次元一致性をもつことを指摘している (Fujikoshi (2022)).

 

【客員教授等 (国際会議等による訪問は除く)】
カルガリー大学数学・統計学科客員研究員(昭和 50 年 6~8 月)
オーストラリア CSIRO 数学・統計部上級研究員(昭和 51 年 10 月~昭和 52 年 10 月)
淡江大学数学研究所客員教授(昭和 55 年 2~7 月)
ピッツバーグ大学多変量解析センター客員教授(昭和 58 年 7~8 月,昭和 60 年 7~8 月,昭和 63 年 7~8 月)
統計数理研究所統計基礎研究系併任教授 (昭和 61 年 4 月~昭和 62 年 3 月, 平成 5 年 4 月~平成 6 年 3 月)
ペンシルバニヤ州立大学多変量解析センター客員教授(平成 2 年 6~7 月, 平成 3 年 10~11 月,平成 4 年 4~5 月)
中国科学院応用数学研究所客員教授(平成 7 年 10 月)
ウプサラ大学数学科客員教授(平成 9 年 8~9 月)
ボーリンググリーン州立大学数学統計学科・Eugene Lukacs 特別教授(平成 13 年 8~12 月)
統計科学研究所講師(平成 19 年 4 月~)
国立シンガポール大学統計学・応用確率論客員教授(平成 24 年 5 月, 平成 24 年 11 月, 平成 26 年 1 月, 平成 27 年 3 月)
中国東北師範大学数学・統計学部客員教授(平成 27 年 10 月~11 月, 令和元年 10 月)


主要な論文

  204

主要な書籍等出版物

  22

主要なMISC

  10

共同研究・競争的資金等の研究課題

  28

学術貢献活動

  18

社会貢献活動

  2

その他

  1