MISC

2009年

腎移植は尿毒症性心の低心機能を著明に改善する

日本心臓血管外科学会雑誌
  • 中山 泰介
  • ,
  • 黒部 裕嗣
  • ,
  • 堀 隆樹
  • ,
  • 米沢 数馬
  • ,
  • 石戸谷 浩
  • ,
  • 曽我部 仁史
  • ,
  • 加藤 逸夫
  • ,
  • 北川 哲也

38
2
開始ページ
160
終了ページ
164
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.4326/jjcvs.38.160
出版者・発行元
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会

尿毒症性心の低心機能を伴う腹膜透析患者の外科治療においては,その適応や管理に未だ議論がある.今回,心房内腫瘤摘出術前に透析法を腹膜透析から血液透析に変更することで心機能が改善し,手術を安全に行い得て,その後に生体腎移植を施行し,さらに心機能の改善をみた症例を経験したので報告する.症例は71歳の男性で,慢性腎不全に対し6年前より腹膜透析を行っていた.このたび,配偶者をドナーとした生体間腎移植を希望して来院した.術前の心超音波検査でLVEF 25%の低心機能と,同時に右房内に浮遊する腫瘤を指摘され,急処生体間腎移植を延期し,まず右房内腫瘤摘出術を行うこととした.低心機能の原因は尿毒症性,虚血性の両因子が考えられた.右房内腫瘤摘出術の前に,腹膜透析から血液透析に変更すると,2カ月後にLVEF 48%と心機能の改善を認めた.そこで,人工心肺補助・心拍動下で右房内腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的に摘出腫瘤は壊死組織と線維化血栓からなり,治癒期心内膜炎と診断された.術後状態は安定して心不全症状を来すことなく回復し,その5カ月後に生体間腎移植を施行し,腎機能の改善とともに,さらにLVEF 56%と著明な改善を認めた.低心機能を伴う腹膜透析患者における外科治療では,手術に先立って透析方法を適切に変更することにより心機能の改善を図ることができ,より安全な外科治療が可能であり,本病態を有する場合の考慮すべき戦略になりえると思われる.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.4326/jjcvs.38.160
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004886944
Jamas Url
http://search.jamas.or.jp/link/ui/2009143080
ID情報
  • DOI : 10.4326/jjcvs.38.160
  • ISSN : 0285-1474
  • CiNii Articles ID : 130004886944

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