MISC

2008年

薬物誘発性歯肉増殖症の発症に関与する遺伝子多型の検索 : α2インテグリン+1648G/A遺伝子多型

日歯保存誌
  • 美原(和田) 智恵
  • 曽我 賢彦
  • 高柴 正悟
  • 永田 俊彦
  • 木戸 淳一
  • 板東 美香
  • 片岡 正俊
  • 久保田 健彦
  • 板垣 真奈美
  • 島田 靖子
  • 田井 秀明
  • 吉江 弘正
  • 西村 英紀
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51
4
開始ページ
464
終了ページ
471
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11471/shikahozon.51.464
出版者・発行元
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会

薬物誘発性歯肉増殖症は,カルシウム拮抗剤,抗てんかん剤あるいは免疫抑制剤の服用者の一部に認められる副作用である.歯肉増殖症の発症機構についてこれまでにさまざまな報告がなされてきたが,近年,歯肉増殖症は歯肉線維芽細胞におけるα2インテグリン発現の抑制とコラーゲンファゴサイトーシスの抑制を介したコラーゲン線維の蓄積により発症することが示された.しかしながら,歯肉増殖症の発症率が報告により異なっている原因については不明である.いくつかの疾患において,その発症に関与する遺伝的素因として一塩基多型が知られている.筆者らは,α2インテグリン+807C/T遺伝子多型が歯肉増殖症の発症と関連することを示したが,この遺伝子多型はアミノ酸変異を生じないため発症との直接の関与は考えられず,+807の近傍のほかの一塩基多型との協調関与の可能性が考えられた.そこで本研究では,歯肉増殖症の発症と+807遺伝子多型と連鎖不平衡の関係にあるα2インテグリン+1648G/A遺伝子多型との関連について検討を行った.被験者は,徳島大学病院および新潟大学病院に通院するカルシウム拮抗剤,フェニトイン,あるいはサイクロスポリン服用患者98名を対象とした.歯肉増殖はMcGawらの基準に基づき判定した.末梢血サンプルは増殖症患者45名(増殖症群)と非増殖症患者53名(非増殖症群)から採取した.血液からゲノムDNAを抽出し,α2インテグリン+1648遺伝子部位についてシークエンス分析を行った.その結果,α2インテグリン+1648G/Aの遺伝子型分布は,GGが増殖症群と非増殖症群でそれぞれ95.6%と88.7%と著しく高く,GAはそれぞれ4.4%と9.4%,そしてAAは非増殖症群の1例のみであった.また,アレル頻度については+1646Gアレルが増殖症群と非増殖症群でそれぞれ97.8%と94.7%で,+1648Aアレルがそれぞれ2.2%と5.3%であり,両群間には有意な差は認められなかった.これらの結果は,薬物誘発性歯肉増殖症の発症はヒトα2インテグリン+1648G/A遺伝子多型と相関しないことを示している.しかしながら,歯肉増殖症はα2インテグリン+807C/T遺伝子多型と+1648G/A以外のその他の遺伝子多型との協調を介して発症することも考えられる.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11471/shikahozon.51.464
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007154321
ID情報
  • DOI : 10.11471/shikahozon.51.464
  • ISSN : 0387-2343
  • CiNii Articles ID : 110007154321
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000005788005

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