2008年11月5日
「月への願い―漢詩に見る「七夕」伝承(下)―」
『河川レビュー』
- 巻
- 号
- 143号
- 開始ページ
- 68
- 終了ページ
- 73
- 出版者・発行元
- 新公論社
牽牛と織女にちなむ「七夕」伝説は、六朝より唐代に至り、大いに進展した。その背景となった風習に、「乞巧」がある。これは、地上の女性たちが織女に裁縫の腕前の上達を祈る儀礼である。7月7日の夜、七本の針に五色の糸を通すことができれば、女性たちの願は叶った。この風習は、六朝より唐代の詩歌に散見できるが、本来牛女の悲恋にちなむ習俗であれば、星の光や天の川に祈願したはずである。しかし、月明かりを頼りに針に糸を通したことが詩歌に詠まれたことで、「月光」に付随する発想が、七夕を読む詩にも持ち込まれることになった。こ…