共同研究・競争的資金等の研究課題

2000年4月 - 2002年3月

顎下腺細胞におけるアポトーシス関連シグナル伝達成分とHSP90との相互作用

日本学術振興会  科学研究費補助金  
  • 佐藤 詔子

配分額
(総額)
3,900,000円
(直接経費)
3,900,000円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

細胞の増殖、分化、アポトーシスのシグナルは密接に関連しあって機能している。最近、これらのシグナル伝達成分はシャペロン機能を有するHSPファミリー分子により制御されるとの報告がなされてきている。本研究ではヒト唾液腺腺癌細胞(HSG)におけるアポトーシス誘導経路にあるシグナル伝達成分とHSP90との相互作用を調べることを目的とした。初めにHSG細胞に対するアポトーシス誘導能を検討した。HSG細胞においてTNFα処理はアポトーシスを誘導しなかった。一方、抗FAS抗体処理では30%の細胞がアポトーシスを惹起したが、TNF-αで前処理後に抗FAS抗体で処理すると60%と相加的増加を示した。そこで、アポトーシスシグナル関連遺伝子の発現をRT-PCRで調べた。TNFαはFas発現を数倍に増加したことからTNFαはFasによるアポトーシス誘導を増強させることが示唆された。また、カスパーゼ活性に対する阻害実験から抗Fas抗体誘導アポトーシスにカスパーゼ、特に8と3の関与が示唆された。つぎに抗Fas抗体誘導アポトーシスにおけるHSP90の関与を調べた。HSP90の特異的阻害剤であるgeldanamycinで処理後、抗Fas抗体刺激を行った結果、抗Fas抗体単独刺激で30%だったアポトーシス細胞数が90%に増加した。このことからHSP90がアポトーシスシグナル伝達分子の制御に関与していることが強く示唆された。ついで抗FAS抗体刺激後、ウェスタンプロッティング法によりHSP90アイソフォームを調べた。HSP90αのタンパクレベルは変動しなかったがHSP90βの増加が認められた。さらにHSG細胞のプロテオーム解析を行った。二次元電気泳動で観察されたHSP90のスポットは抗FAS抗体処理により酸性側へとシフトしたことからHSP90のリン酸化の可能性が示唆された。