論文

査読有り
2009年8月1日

線維筋痛症の痛みをどうとらえるか-慢性疼痛のモデル的疾患として-

心身医学
  • 松野俊夫
  • ,
  • 金外淑
  • ,
  • 小池一喜
  • ,
  • 井上幹紀親
  • ,
  • 三浦勝浩
  • ,
  • 花岡啓子
  • ,
  • 江花昭一
  • ,
  • 橋本修

49
8
開始ページ
893-902
終了ページ
902
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
DOI
10.15064/jjpm.49.8_893
出版者・発行元
一般社団法人 日本心身医学会

近年わが国でも注目されてきた線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome;FMS)は,長期間持続する全身の結合織における疼痛と多彩な愁訴を呈する慢性疼痛のモデルともいえる病態であるが,心身症としての側面を濃厚に有している疾患でもある.発症の背景には何らかの遺伝的,生理学的要因に加え,女性の内分泌的な内的環境の変化やライフサイクル上の多彩な心理社会的ストレス要因も大きく関係する.患者の90%以上に発症の時期に一致して手術・事故・外傷・出産・肉体的過労・過剰な運動などのエピソードがあり,天候,環境変化や不安・抑うつ・怒り・強迫・過緊張・焦燥などの心理的ストレスと連動して病態が変動する,強迫,完全性,執着などの性格特性がみられる,など強い心身相関が認められる.患者の尿中セロトニン,ノルアドレナリンの代謝産物である5HIAAやMHPG,骨格筋の解糖系に関与するアシルカルニチンはうつ病患者と同等に低値であり,FMSの痛みや倦怠感,多彩な身体症状,精神症状の背景にモノアミンやカルニチン代謝が関与していることが示唆される.FMSの治療には通常の対症療法が奏効しないため,的確な薬物療法が重要でSSRIやSNRIなどの抗うつ薬,抗けいれん薬,漢方薬などが併用される.さらにストレス緩和のための生活指導や心身医学的な視点からのカウンセリング,認知行動療法など全人的治療が必須である.この考え方はFMSのみならず他の慢性疼痛にも共通しており,薬物や理学的治療法などの「医療モデル」に加え「成長モデル」からアプローチする重要性は変わらないものである.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.15064/jjpm.49.8_893
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007339755
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AN00121636
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/10285166
URL
http://search.jamas.or.jp/link/ui/2009286884
ID情報
  • DOI : 10.15064/jjpm.49.8_893
  • ISSN : 0385-0307
  • CiNii Articles ID : 110007339755
  • CiNii Books ID : AN00121636

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