2001年 - 2002年
合成高分子を利用した抗癌剤の腫瘍集積化
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
癌の薬物化学療法においては,細胞毒性の高い抗癌剤をいかに腫瘍組織へ集積化するかが大きな課題となっている.本研究では,ポリビニルアルコール(PVA)を抗癌剤薬物担体として利用することを目的に,その基本的な体内動態を検討した.また,pH感受性を有するcis-アコニット酸をスペーサーとして用い,ダウノルビシン(DNR)やドキソルビシン(DOX)のPVA結合体の合成と評価を行った.PVAは臓器移行性が低く,血液中に長時間滞留することが明らかとなった.また,投与量依存性がなく,体内動態において広い濃度範囲で線形性を示すことが認められた.^<125>I-PVAをS180担癌マウスに投与し,臓器分布を測定した結果,腫瘍に集積することが明らかとなった.また,顕微鏡観察によってもFITC標識PVAは腫瘍組織に著しく集積することが明らかとなった.pH感受性スペーサーとしてcis-アコニチル基をDOXに導入したADOXのPVA結合体(PVA-ADOX)からのDOXの遊離を調べたところ,塩基性・中性領域ではDOXを遊離せず,酸性領域(pH4-6)で遊離することが明らかとなった.また,^<125>I-PVA-ADOXをS180担癌マウスに投与し,臓器分布を測定した結果,腫瘍に集積することが認められた.さらに,in vivoにおけるPVA-ADOXの制癌効果を調べたところ,S180担癌マウスにおいて良好な抗癌活性を示した.
- ID情報
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- 課題番号 : 13672406
- 体系的課題番号 : JP13672406