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査読有り
2006年

安静時と収縮時における大腿四頭筋の筋厚変化量の測定によって筋力発揮水準の推定は可能か?

日本理学療法学術大会
  • 市橋 則明
  • ,
  • 池添 冬芽
  • ,
  • 大畑 光司

2005
開始ページ
A0003
終了ページ
A0003
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2005.0.A0003.0

【目的】筋力を推定するために表面筋電図を用いることが多いが,1)深部筋の測定ができない2)皮膚の処理に時間がかかる3)日を変えて筋活動の変化を比較することが不可能などの問題のため臨床的にあまり使われていない.近年,筋厚の変化により筋力を推定しようという試みがされているが,筋厚と筋力の関係を明確に示した報告は少ない.本研究の目的は,1)超音波法で求めた大腿四頭筋の安静時と収縮時の筋厚を各屈曲角度で比較すること2)大腿四頭筋の筋力発揮と筋厚の変化量の関係を明確にすることである.<BR>【対象と方法】本研究に同意を得た健常学生20人(男性13名,女性7名:平均年齢22.2歳)を対象とした.測定肢位は背臥位(膝伸展位)と椅子座位(膝30,60,90度屈曲位)とし,超音波画像診断装置(GE横河メディカルシステム)を用いて大腿四頭筋の筋厚を測定した.筋厚は各屈曲角度で安静時と大腿四頭筋の最大収縮時に測定した.また,膝30度屈曲位においては,最大膝伸展筋力をマスキュレータ(OG技研)で測定し,それを100%MVCとし,安静時と0(重力のみが抵抗),25,50,75,100%MVCの筋力を発揮したときの筋厚を測定した.測定部位は上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結んだ線上の1/2(RF部:大腿直筋(RF)と中間広筋(VI)),遠位1/3から3cm外側(VL部:外側広筋(VL)とVI),膝蓋骨上から45度内側へ5cm(VM部:内側広筋(VM)とVI)とした.統計学的検討には,対応のあるt検定,反復測定分散分析,多重比較を用いた.<BR>【結果と考察】膝伸展位と30度屈曲位では,最大収縮により筋厚はすべての部位で有意に増加した.増加率は,伸展位ではRF部20.3%,VL部10.7%,VM部28.2%であった.30度屈曲位ではRF部16.6%,VL部8.0%,VM部21.5%と増加率は伸展位に比べて減少した.60度屈曲位では,RF部4.5%,VM部22.7%と有意に増加したが,VL部には変化がなかった.90度屈曲位ではVM部は5.1%とわずかに増加したもののRF部(-4.5%)とVL部(-7.1%)は有意に減少した.30度屈曲位における0-100%MVC筋力発揮時の多重比較では,RF部では0,25,50,75%MVCの筋力発揮により各MVC間において有意に筋厚は増加した.ただし,75%と100%MVCの筋厚には有意な変化はなかった.一方,VL部とVM部では安静時,0%,25%MVC間には有意な増加が見られたが,25%MVCと50,75,100%MVC間に有意な変化はなく,25%MVCでほぼ筋厚は最大値を示した.これらの結果より,大腿四頭筋の筋厚が筋収縮により大きく増加するのは,膝伸展位と30度屈曲位であり,筋短縮位の方が筋厚の変化を評価するには優れていることが判明した.また,筋短縮位である30度屈曲位であってもVM部とVL部は25%MVCと100%MVCに差がなく,筋力の推定には使えないと考えられた.本研究により30度屈曲位での大腿中央部(RF部)の筋厚の変化は75%MVCまでは筋力の変化にほぼ対応し,筋厚により75%MVCまでの筋力を推定できる可能性があることが示唆された.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2005.0.A0003.0
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004578646
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2005.0.A0003.0
  • CiNii Articles ID : 130004578646

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