MISC

査読有り
2009年

Trail Walking Exerciseの転倒予防効果:―特定高齢者を対象とした無作為化比較対照試験―

日本理学療法学術大会
  • 山田 実
  • ,
  • 市橋 則明

2008
開始ページ
E1O1009
終了ページ
E1O1009
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2008.0.E1O1009.0

【目的】<BR> 日常生活は、単一の課題条件ではなく、複数の課題条件下で遂行されており、「探索機能」「注意機能」「短期記憶」「方向転換」「リーチ動作」など多くの認知および運動機能が同時に要求される.易転倒傾向にある高齢者では、このような複数の課題環境における、動作遂行が困難であることが明らかとなっており、転倒を予防するためには、複数課題条件下での移動能力向上が必須であると考えた.そこで我々は、上記のような日常生活で求められる機能を含めた複数課題条件下でのトレーニングとして、Trail Walking Exercise (TWE)を考案した.これは注意機能検査であるTrail Making Testを紙面上ではなく、床面上で歩きながら行うというものである.本研究では、TWEの転倒予防効果を検証するとともに、持続効果についても検証した.<BR>【方法】<BR> 対象は地域在住の特定高齢者60名(80.5±5.6歳)であった.対象者には紙面および口頭にて、研究の説明を行い同意を得た.対象者は、くじ引きによって無作為に、標準的な転倒予防のためのトレーニング(ストレッチ、筋力増強、バランス強化、敏捷性強化など計60分)とTWEを行う介入群30名と、標準的なトレーニングのみを行う対照群30名に分けられた.介入は両群ともに、週に1回、16週間実施された.TWEは、5m×5mの領域内に、_丸1?丸15_番までの旗をランダムに設置し、番号順(逆順)に出来るだけ速く通過していくというトレーニングを行う.段階的に難易度を増加させ、8週目までは1人で行うが、9週目以降は2人で行うこととし、一人は(1)から、もう1人は(15)から開始することとした.なお、運動量統一のため、対照群には2分間歩行を指示した.介入前後および介入6ヶ月後には、10m歩行速度、TUG、片脚立位、ファンクショナルリーチなどの運動機能評価に加え、紙面上での注意機能検査であるTMT、それに介入後6ヶ月間の転倒数を測定し、アウトカムとした.<BR>【結果および考察】<BR> 介入前のベースラインの比較では、全ての項目で有意な群間差を認めなかった.二元配置分散分析の結果、TUG、TMTに交互作用を認め、介入群でのみ改善を認めた(p<0.05).なお介入群のTUG、TMTの改善効果は、介入6ヶ月後でも持続していた(TUG; 介入前12.2±2.6秒、介入後10.9±2.0秒、介入6ヶ月後11.4±1.9秒)(TMT; 介入前79.4±47.4秒、介入後62.1±29.5秒、介入6ヶ月後65.9±32.1秒).介入後6ヵ月間における転倒発生率は、介入群で2名(6.6%)、対照群で10名(33.3%)となっており、介入群では転倒予防効果を示した(p<0.05).<BR>【結語】<BR> TWEは、特定高齢者における転倒予防に有用であり、その効果は少なくとも6ヵ月以上は持続することが示唆された.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2008.0.E1O1009.0
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004581197
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2008.0.E1O1009.0
  • CiNii Articles ID : 130004581197

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