MISC

2011年

他動的足関節背屈時の受動的トルクと筋硬度の変化について

理学療法学Supplement
  • 中村 雅俊
  • ,
  • 池添 冬芽
  • ,
  • 塚越 累
  • ,
  • 武野 陽平
  • ,
  • 大塚 直輝
  • ,
  • 市橋 則明

2010
0
開始ページ
AeOS3011
終了ページ
AeOS3011
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2010.0.AeOS3011.0
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

【目的】<BR>一般的に筋の伸張性の評価としては,関節可動域を測定することが多い。しかし,近年では関節可動域の測定は対象者の痛みに対する慣れといった心理的な要因の問題が生じることなどが指摘されており,関節可動域よりも,関節を他動的に動かした時に生じる受動的トルクを筋の伸張性の評価として用いることが推奨されている。筋や腱の粘弾性を反映している受動的トルクは筋が伸張されるとともに大きくなることが報告されている。しかし,この受動的トルクの測定には大がかりな筋力測定装置が必要であるため,簡便に筋の伸張性を評価することが可能な指標を開発することが課題となっている。そこで本研究は徒手保持型筋硬度計を用いた簡便な筋硬度評価法に着目し,他動的足関節背屈に伴う腓腹筋の筋硬度および受動的トルクの変化について明らかにし,筋の伸張度合いを評価する指標としての筋硬度評価の有用性について検討することを目的とした。<BR>【方法】<BR>対象は整形外科的疾患を有さない健常男性14名(年齢23.8±3.2歳,身長174.4±5.2cm,体重68.2±6.9kg)とした。<BR>利き脚 (ボールを蹴る) 側の腓腹筋を対象筋として,他動的に足関節背屈させた時の受動的トルクと筋硬度を測定した。受動的トルクの測定として,対象者を腹臥位・膝関節完全伸展位で足関節を等速性筋力測定装置(川崎重工業社製MYORET RZ-450)のフットプレートに固定し,足関節背屈0°から背屈30°位まで他動的に足関節背屈させた時の足関節底屈方向に生じるトルクを10°ごとに測定した。筋硬度の測定には徒手保持型の筋硬度計(NTI製マイオトノメーター)を使用し,腓腹筋を2.0kgの圧迫力で押した時にプローブが貫入した筋移動距離を測定した。筋硬度の測定は受動的トルクと同様の肢位にて背屈0°から背屈30°までの10°ごとに行い,それぞれ5回測定した値の平均値をデータとして採用した。なお,筋硬度はプローブが貫入した筋移動距離を測定しているため、値が小さいほど筋が硬いことを意味する。測定にあたっては対象者にリラックスするように指示し,表面筋電図(Noraxon社製テレマイオ2400)を用いて腓腹筋の防御性収縮が起きていないことを確認しながら測定を行った。<BR>統計学的処理は,足関節背屈角度と受動的トルクおよび足関節背屈角度と筋硬度の関連を検討するためにSpearmanの順位相関を用い,有意性の検定を行った。また,受動的トルクと筋硬度について,各背屈角度間の違いを検討するためにSteel-Dwass法における多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>対象者には研究の内容を説明し,研究に参加することの同意を得た。なお,本研究は京都大学医学部医の倫理委員会の承認を得た(承認番号E-816)。<BR>【結果】<BR>受動的トルクは足関節背屈0°で4.1±1.5Nm,背屈10°で9.2±1.9Nm,背屈20°で16.0±3.7Nm,背屈30°で28.4±6.1Nmであった。筋硬度(筋移動距離)は背屈0°で10.7±0.9mm,背屈10°で10.0±0.9mm,背屈20°で9.1±1.1mm,背屈30°で7.8±1.4mmであった。 Spearmanの順位相関分析の結果,足関節背屈角度と受動的トルク(r=0.95,p<0.01)および足関節背屈角度と筋硬度(r=-0.71,p<0.01)との間には有意な相関が認められた。また多重比較の結果,受動的トルクは足関節背屈0°,10°,20°,30°のすべての角度間に有意な差を認め,足関節背屈角度が増加するにつれて受動的トルクの有意な増加がみられた。一方,筋硬度においてもすべての背屈角度間に有意差を認め,足関節背屈角度が増加するにつれて筋移動距離の有意な低下、すなわち筋硬度の増加がみられた。<BR>【考察】<BR>本研究の結果,筋の伸張性を反映するとされる受動的トルクだけでなく,筋硬度についても他動的足関節背屈時の関節角度と関連がみられることが明らかとなり,さらに多重比較の結果,関節角度が増加するにしたがって受動的トルクおよび筋硬度は増加することが明らかとなった。これらの結果より,他動的足関節背屈時の筋伸張性の評価として,受動的トルクだけでなく,筋硬度も指標に用いることが可能であると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>受動的トルクの評価と比較して,筋硬度計を用いた筋硬度評価は簡便に測定が可能であり,かつ個々の筋について評価することができるという利点を有する。この筋硬度評価は,今後,筋の伸張性評価の新しい指標として理学療法分野においての応用が期待される。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2010.0.AeOS3011.0
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201102258970413178
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005016778
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2010.0.AeOS3011.0
  • ISSN : 0289-3770
  • J-Global ID : 201102258970413178
  • CiNii Articles ID : 130005016778
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000283770370

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