MISC

2016年

下腿三頭筋の弾性率の加齢変化および筋間差について

理学療法学Supplement
  • 加藤 丈博
  • ,
  • 池添 冬芽
  • ,
  • 梅原 潤
  • ,
  • 佐伯 純弥
  • ,
  • 田村 耀
  • ,
  • 牧田 大樹
  • ,
  • 市橋 則明

2015
開始ページ
636
終了ページ
636
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2015.0636
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

【はじめに,目的】加齢に伴い骨格筋の筋量は低下することが知られており,個々の筋量の加齢変化についても多く報告されている。一方,個々の筋のスティフネス(硬さ)を評価する指標として,近年,超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いた筋の弾性率が着目されている。しかし,弾性率を用いた先行研究によると,加齢に伴い筋の弾性率は増加するという報告と低下するという報告とがあり,弾性率の加齢変化については一定の見解が得られていない。また,加齢に伴う筋量低下率には筋間差があることが知られており,例えば下腿三頭筋においてはヒラメ筋に比較して腓腹筋では加齢に伴う筋量低下率が大きいことが報告されている。しかし,下腿三頭筋の筋スティフネスについても加齢変化の筋間差があるのかについては明らかではない。そこで本研究は,若年女性と高齢女性における下腿三頭筋の弾性率を評価し,下腿三頭筋の弾性率の加齢変化および腓腹筋とヒラメ筋の弾性率の筋間差について明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常高齢女性85名(年齢73.5±4.7歳)および健常若年女性24名(年齢21.6±1.3歳)とした。重度の神経学的・整形外科的障害を有する者は対象から除外した。超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用いて,腓腹筋内側頭とヒラメ筋について安静時の弾性率(kPa)を測定した。弾性率の計測肢位は腹臥位,膝関節伸展位,足関節背屈0度位とし,計測部位は下腿長の近位30%の位置とした。なお,弾性率は値が大きいほど筋が硬いことを示す。加齢による弾性率の変化率として,各筋の若年者に対する高齢者の弾性率の低下率を求めた。統計解析について,若年者および高齢者の弾性率の比較には対応のないt検定を用いた。若年者,高齢者それぞれにおける腓腹筋とヒラメ筋の弾性率の比較および加齢による低下率の筋間比較には対応のあるt検定を用いて検討した。【結果】若年者と高齢者の弾性率を比較すると,腓腹筋およびヒラメ筋の弾性率はいずれも若年者と比較して高齢者のほうが有意に低く,加齢に伴い下腿三頭筋の筋スティフネス(硬さ)が減少することが示された。筋間で弾性率を比較すると,若年者および高齢者のいずれもヒラメ筋と比較して腓腹筋のほうが有意に高く,腓腹筋のほうが硬いことが示された。一方,加齢に伴う弾性率の低下率はヒラメ筋と比較して腓腹筋のほうが有意に高く,ヒラメ筋よりも腓腹筋のほうが加齢に伴い筋スティフネスは減少することが示された。【結論】本研究の結果,腓腹筋およびヒラメ筋の弾性率(筋スティフネス)は加齢により低下することが明らかになった。また,下腿三頭筋の弾性率の加齢変化については,ヒラメ筋よりも腓腹筋のほうが加齢による低下率が大きく,加齢に伴う下腿三頭筋の筋スティフネスの減少の程度には筋間差があることが示唆された。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2015.0636
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005417721
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2015.0636
  • CiNii Articles ID : 130005417721

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