論文

2008年10月

「トマス・アクィナス哲学から見た近代法思想」

『法哲学年報2007』有斐閣

開始ページ
14-26
終了ページ
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)

本稿では近代が、トマスにより集大成された中世までの理性像、人間像から何を切り取っていったか、ということを浮かび上がらせ、近代法思想の問い直しの要点を根元的な形で見出すことを試みる。トマスは存在と理性が一方から他方への一方通行的あるいは直線的関係ではなく、双方向的関係あるいは発展的な発出・循環・回帰的関係にあると考えた。近代とは、このつながりの輪を断ち切るための規範的および思想的サポートを、法および法思想に求めた時代であった。しかしその近代的営為が、人間の無制約性、存在理解における全体論的視座の欠如、行為における客観的目的の喪失、行為・認識の恣意的独断的展開の許容を生み出し、それらが人間と社会と自然に大きな歪みをもたらしたとすれば、法および法思想は、まさに試行錯誤的に、しかし弥縫策的ではなく根元的に、発出循環回帰の輪を結びつけていくプロセスに入っていくべきということになるのではないか。少なくともトマス哲学からはそのように見えるであろう。

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