Works(作品等)

2006年7月

「文献紹介・甲斐克則『被験者保護と刑法』」


作品分類
その他
発表場所
『年報医事法学21』(日本評論社)

書評

医療をめぐる法の在り方に関する書は数多いが、法学者による被験者保護に関する体系書は本書が初めてである。本書評においては、被験者・患者の権利保護を論じる際の原点を「人間の尊厳」に置いていること、そして序章に「広島から見た生命倫理」報告を基にした論稿を据えて原爆をはじめとして戦争という暴力を体験した当事国であることを日本で人体実験・臨床試験を考える重要な立脚点としていることを高く評価する。そして人間の尊厳を原点に置いた際の被験者保護に関する著者の帰結を七つにまとめ、説明する。但し、問題は、この七つの帰結を相互矛盾させることなく、人間の尊厳の基にどのように包摂するかが課題であることを指摘する。しかし、むしろこの課題は法哲学に投げかけられたものであって、評者の「物語としての生」理解からの応答を試みる。