Works(作品等)

2011年3月

昭和女子大学蔵 小島信夫蔵書を読む⑥


作品分類
その他
発表場所
水声社 小島信夫批評集成第2巻 変幻自在の人間(水声社) 月報⑥

小島信夫が雑誌『新潮』(平成元年3月)に「昭和」を送る1冊として選んだ「機械」は小島信夫蔵書に二冊ある。一冊は、昭和60年2月発行の『日本近代文学館名著復刻全集』に収録された昭和六年四月白水社発行の復刻本。もう1冊は、昭和10年3月創元社発行の単行本で、購入年月は不明だが、古書店が付したと思われる「200」が鉛筆書きで最終頁の右上に残る。書き込みは復刻本にあり、傍線はほぼ毎頁、鉛筆で書かれたメモは46頁中18頁に見られる。小林は倫理書として読み、小島は倫理書として読みながらもさらに、話が〈息つく暇もなく、主人公の言葉によって運ばれる〉方法に注目している。復刻本の書き込みには、「私」の軽部評価の箇所に『論拠がない』、「私」の屋敷への想像箇所に『心理だけで論拠がない。心理だけが問題だ。それは人には分らない。分ってもらいたくない。スタンガン』とある。『新潮』で、この小説は読者に躓きを感じさせ、〈主人公の結論はま