共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年8月 - 2025年3月

動的不斉転写に基づく高度な不斉増幅を可能にする動的キラル高分子触媒の開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(S)  基盤研究(S)

課題番号
20H05674
体系的課題番号
JP20H05674
配分額
(総額)
198,510,000円
(直接経費)
152,700,000円
(間接経費)
45,810,000円

二つの不斉増幅-“弱いキラル相互作用の増幅”と“光学純度の増幅”-を実現する次世代触媒的不斉合成システムとして、本来微弱なキラル分子相互作用を増幅し、鋭敏ならせん誘起を受ける動的らせん高分子PQXを骨格とするキラル高分子触媒の開発を進めている。このため、らせん誘起ユニット構造探索と、触媒反応開発を並行して進めており、以下に掲ける研究成果が得られた。
【1】らせん誘起ユニット構造探索:PQXには特別なゲスト受容部位は導入せず、PQX主鎖または側鎖との非結合性相互作用によってらせん誘起を行う方法の開発を行なった。プロピルオキシメチル基を有するモノマーユニットから構成されるPQXに対し、新たに乳酸の環状2量体(L-lactide)が高いらせん不斉誘起効果を示すことがわかった。一方、PQXとキラルゲストの疎水性相互作用を高め、またイオン結合や水素結合の利用を可能にするため、カルボキシル基を側鎖に有する水溶性PQXcoohおよびポリエチレングリコール鎖を有するノニオン性PQXtregの合成に成功し、それぞれキラルアミン類およびマンデル酸により、水中において強いらせん誘起を受けることを見出した。
【2】触媒反応開発:求核性のp-(ジプロピルアミノ)ピリジル基を導入したPQXdpap触媒を用い、2級アルコールの速度論的光学分割を実現した。最も効果的な場合では鏡像異性体間での反応速度差sが50以上に達することを明らかにした。
【3】上記に加え、PQXとキラルゲストの非結合性相互作用の理論的、分光学的解明を進めた。NMR測定とDFT計算によってPQXと1,1,2-トリクロロエタン(TCE)の相互作用を調べたところ、PQX主鎖が形成する浅い溝(DNAにおけるGrooveに相当)にTCEが収まっていることがわかった。ロンドン分散力、および側鎖エーテル酸素との静電相互作用が主たる誘引力であった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20H05674
ID情報
  • 課題番号 : 20H05674
  • 体系的課題番号 : JP20H05674