共同研究・競争的資金等の研究課題

2003年 - 2005年

初期啓蒙主義詩学を創発するパラダイム-ドイツ詩学の位置価と模倣説の体系構築-

日本学術振興会  科学研究費助成事業  若手研究(B)

課題番号
15720057
体系的課題番号
JP15720057
担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

まず、詩学の枠を超えた諸学の相関という点では、概念把握・認識・推論といった論理学的な知の歩みが、ヴォルフ哲学に基礎付けを求めるテクストで幅広く見て取れた。また、想像力や情動という概念は、悟性概念との関連で基礎付けられていたり、哲学的な原理の外で作用の技法論を形成したり、体系的な裏付けが希薄であったりした。また、知の総覧の役割を担った哲学をどの程度基盤とするかで、論証スタイルや章立ての姿も変わるという見通しを得た。学の対象として上位の悟性能力から下位の能力が独立したという従来の理解図式は、まだ哲学の分節化に依拠しており、修辞学等で古典の影響や技法の集積的記述というものが哲学的な体系構築を上回る場合や、アルファベット順の百科事典の発想で哲学の体系性から離れる場合の方が、諸学のパラダイム転換にとってより重要である。
こうした成果を踏まえて改めて模倣説を問い直すと、模倣概念は、諸学を横断して体系構築に関わる悟性概念と間接的に関係し合い、その規定の度合いによって様相を変えると推定された。情動面と理論面に別々に影響源がある場合、技法面と理論面で異なる模倣概念が観察され、詩学書の章立にて表れる主題の分節化が少数の原理に還元できない場合、模倣概念の統一的把握も困難となる。詩学の固有性に関わる概念が、そうした構造的規定を外部から受ける。詩学の領域規定や詩学内の領域区分は、主に論じる対象で規定されるが、深層ではより広く、体系化の要請と辞書的な項目化の要請、体系内の相互参照と体系外の伝統への参照によって構造的に規定されている。模倣すべきは可視的自然か古代人か真理かといった一見奇妙な模倣観の揺れや、文芸と絵画と音楽とでは模倣の特性が異なるといった議論の展開は、そうした構造的規定に立ち返ることで人文主義諸学のパラダイムからいかに詩学が創発されてきているかという構図のなかで整合的に理解可能となる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15720057
ID情報
  • 課題番号 : 15720057
  • 体系的課題番号 : JP15720057