2020年9月
肝芽腫におけるWntシグナル関連新規創薬標的GREB1の同定と核酸医薬の開発
日本小児血液・がん学会雑誌
- ,
- ,
- ,
- 開催年月日
- 2020年9月 - 2020年9月
- 記述言語
- 日本語
- 会議種別
- 主催者
- (一社)日本小児血液・がん学会
肝芽腫は日本国内では年間30〜40名の頻度で発生する希少がんで,発生原因は不明である.肝芽腫の治療において,手術で切除することができないことや,化学療法では重篤な副作用が問題となることがある.そのため,肝芽腫に対して副作用が少なく,良好な治療効果の得られる新規の分子標的治療薬の開発が期待されている.我々は,肝芽腫において約90%の高頻度で遺伝子変異が生じるβ-cateninによって活性化されるWntシグナルの下流遺伝子を網羅的に探索して,GREB1(Growth Regulation By Estrogen In Breast Cancer 1)を同定した.GREB1は,肝芽腫の約90%の患者において過剰発現し,GREB1を発現する肝芽腫細胞株でGREB1の発現を抑制すると,細胞の増殖が阻害され,細胞死が誘導された.また,GREB1は核内でTGFβシグナルの転写因子であるSmad2/3と結合し,Smad2/3と転写共役因子p300の相互作用を阻害する結果,TGFβシグナルを抑制することで肝芽腫の増殖を促進した.さらに,肝芽腫の治療薬開発を目的として,GREB1の発現を抑制するための修飾型アンチセンス核酸(ASO)を大阪大学大学院薬学研究科生物有機化学分野との共同研究で開発した.肝芽腫細胞を同所移植したマウスにGREB1 ASOを全身投与したところ,GREB1の発現と腫瘍形成を抑制した.本研究は肝芽腫の新たな分子標的治療薬の開発に貢献することが期待される.(著者抄録)