1995年 - 1995年
ボツリヌス毒素の作用機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C) 一般研究(C)
24穴のプラスチックディッシュに培養したICRマウスの小脳初代培養細胞および培養神経細胞NG-108を用いて、5種類のアゴニストの刺激によるATPの放出を、さらに、その放出に及ぼすボツリヌス毒素の阻害作用を検討した。ATPはルシフェリン-ルシフェラーゼ系を用いて測定した。初代培養細胞ではいずれのアゴニストも同程度の効果を示したが、NG-108細胞では、1mMのブラジキニンの刺激が最も効果が良かった(他の約5倍)。このブラジキニンの放出作用は、ブラジキニンによる刺激よりも1時間前に、0.5pg/ml以上の精製C型ボツリヌス毒素を作用させるとほぼ完全に阻害されたが、他のアゴニストの刺激効果に対してはそれほどの阻害効果を示さなかった。さらにこのブラジキニンによるATP放出系を用いて、毒素のATP放出阻害作用に及ぼす6種類の代謝阻害剤の影響を調べたところ、オリゴマイシンでは毒素の阻害作用は減弱されなかったが、V型ATPase阻害剤であるバフィロマイシンでは、ほぼ完全に毒素の阻害作用が消失した。以上のことから、このアゴニスト刺激に応答した培養細胞からのATP放出系は、従来からのアセチルコリンやモノアミンの測定に比較し、簡単にかつ感度よく測定できることが、またこの系におけるATPの放出を、ボツリヌス毒素が阻害することが判明した。毒素の作用がアゴニストの種類により異なること、さらにこの毒素の作用に対する代謝阻害剤の影響も、阻害剤の種類により異なることから、今後これらの理由を明らかにすると、ケミカルメディエーターの放出機構、およびその放出を阻害する毒素の作用機構も解明され得ると結論された。
その他、ボツリヌス毒素およびその遺伝子を分子生物学的に解析し、数報の論文を発表した。また、毒素遺伝子断片を大腸菌内で発現させる系も確立し、現在その遺伝子産物の機能を解明している。
その他、ボツリヌス毒素およびその遺伝子を分子生物学的に解析し、数報の論文を発表した。また、毒素遺伝子断片を大腸菌内で発現させる系も確立し、現在その遺伝子産物の機能を解明している。
- ID情報
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- 課題番号 : 07670311
- 体系的課題番号 : JP07670311