72歳男。縦隔脂肪肉腫の再発に対して腫瘍摘出術を行い、術中に危機的低血圧が3回発生した。1回目は胸骨切開直後に起き、30分間で約1000mlという大量出血を認めたことから、原因は循環血液量の不足と考え、急速輸血と昇圧薬投与を行ったところ改善した。2回目は手術開始後1時間30分経過時に起き、当初はこの低血圧も循環血液量不足が原因ではないかと考えたが、中心静脈圧の上昇を認めたことから、出血以外の原因も考慮し、経食道心エコー(TEE)を挿入して原因検索を行い、腫瘍による右心系の圧迫が原因と判明した。3回目は手術開始後3時間30分経過時に起き、原因は術者の手による左心系の圧迫であることがTEEによって確認された。