基本情報

所属
仙台徳洲会病院呼吸器内科 顧問  難治性呼吸器疾患治療戦略室 顧問兼室長 (東北医科薬科大学名誉教授)
学位
医学博士(1988年3月 東北大学)

J-GLOBAL ID
200901042484269800
researchmap会員ID
1000202972

外部リンク

主な研究業績

(論文表示後の引用回数は2025年12月のGoogle Scholarによる)

1.    「難治性気管支喘息」の病態研究:喘息で亡くなった患者剖検肺をもちいて、気管支樹における気道平滑筋肥厚の分布を形態計測学的に2群に区別した(米国胸部疾患学会雑誌/Am Rev Respir Dis;ARRD 1990; 2報それぞれ引用回数,129回と275回)。これら最初の2本のARRDの論文は大学院の研究成果であったが、日本国内の学会などでは全くの無反応で酷く気落ちした。しかし大学院を卒業して2か月後に、初の米国胸部疾患学会(Am Thor Soc; ATS、1988)でposter 発表を行ったところ、驚く程の人集りで多くの質問を受け、国内とは正反対の好評を目の当たりにした。以後毎年米国で発表することに努め、米国に留学することを考えるようになった。1990年にBostonで開催されたATSでは、Poster Discussion のSession での大会場で発表することになり、3人の座長からほんの数人に与えられた口演の機会を得て、その時も多くの質問者の熱心な反応に驚いた。2年前の初発表を凌駕する反応に感激してから着手したこの研究は、通常のパラフィン切片ではなく、厚さ1micrometerの樹脂の連続切片をつくりなおし、三次元立体再構築による組織形態計測から、平滑筋細胞肥大とその増殖の解析を行い、2群の喘息死患者肺の病態機序の相違を示した。その発表終了後、そのままBostonに留学し、3本目の論文を書いて投稿する許可を、留学を引き受けてくださったProf. Sorokinから得て、恐れ多くも英文チェックまでしていただいて謝辞に名前を載せて、留学先から投稿した(ARRD 1993;895回)。この論文は引用数も当初から多く、高く評価された。後年これらの喘息死患者肺標本を再評価し、気道周囲の線維化病変でリンパ管が消退するために気道粘膜浮腫が遅延し、喘息病態が重症化する可能性を発表し、2005年度日本アレルギー学会学術大会賞を受賞した。その論旨は日本アレルギー学会の英文誌に掲載された(Allergol Int 2008; 59回)

2.   「肺神経内分泌細胞」による換気血流調節の研究:大学院での喘息研究中に興味を持った、長い間未解決の課題である「肺内換気血流調節機構」の解明を目的に、東北大学の医学部図書館で見つけた最新の厚い肺病理の教科書に「肺神経内分泌細胞」の詳細を記述していたProf.Sorokinに、1通の留学希望の手紙を出して受け入れられて、ボストン大学医学部解剖学の肺細胞学分野に留学し、彼がHarvard Univ.で育んできたラット胎児肺組織培養のシステムを用いて、気道上皮細胞に並びながら、遠心性と求心性の両神経系と接している「肺神経内分泌細胞」の胎児肺内の発達(Anat Rec 1993; 2報あわせて52回)と、培養液中の呼吸関連イオン濃度の変化による生理機能物質 ”Calcitonin Gene Related Peptide (CGRP)” の分泌を示し,「肺神経内分泌細胞」が「肺内換気血流調節機構」に関与している可能性を示した(Am J Physiol 1997; 38回)。この分野の研究は世界的にまだ未開発のままだが、将来この研究成果が新しい発展の礎になることを信じたい。(今になって感じることは、ラットの胎児肺を2年間もの間、シャーレの中の胎児肺が分化して小葉の様な肺組織に成長する2〜3週間の過程を、顕微鏡で観察できた経験のありがたさです。この後の癌細胞の培養は増殖しかなかったのですが、肺組織の培養の過程の細胞の分化は、まさに細胞学の要。生物の謎の極みです。これは僕の基礎医学の原点!実は帰国後に始めた「肺の線維化病変における毛細血管やリンパ管の消退」の研究は、ラット胎児肺培養中に肺の毛細血管が消えてしまう現象への考察から始まったのです)

3.    「肺がん組織における癌遺伝子変異の分布」の研究:Boston Univに続いて、肺がん患者肺の組織を多く蓄積し、それらから樹立した細胞株も豊富な米国癌研究所(NCI)に, Boston留学中に1通の留学希望の手紙を出し、研究所で講演させてもらったうえで受け入れられ、新たに肺がん研究に着手した。当時最先端だった「がん抑制遺伝子p53の変異」に関し、遺伝子変異とその異常蛋白過剰発現の相関を示し(Cancer Res 1994, 211回)、同じ変異でも肺癌組織中の蛋白発現に差が生じることを最新の”in situ PCR”の技術を駆使して示した(Oncogene 2002;42回)。帰国する直前の米国癌学会(AACR)での発表では、あのATSでのPoster発表の時の再現となり、隣の研究室の共同研究者のDr. Alfredo Martinezも大興奮で、異なる研究分野での成功を誇りに思った。

<この研究で、NCI留学から帰国した翌年に「黒川利雄がん研究賞」を受賞>

(ちなみに「黒川利雄」先生は、東北帝国大学医学部第3内科第2代教授で、全国に先駆けて胃がんの集団検診を開始するなど消化器癌の診断と治療に努められ、後に「文化勲章」を受賞)

 同様に形態が異なる肺癌細胞からなる肺腺扁平上皮癌がモノクローナルで成り立つことを、NCIから帰国後に大学院生を指導して示した(Am J Pathol 2000; 80回)。肺癌に対する分子標的薬gefitinibの臨床試験中の肺障害は医局から発信され(The Lancet, 2003; 584回)大きな社会問題となった。その後肺癌治療による薬剤性間質性肺炎の危険性を論じたP Camus, S Kudoh, M Ebinaの3人の共著は,British Journal of Cancer, 2004に掲載されて254回の引用を受けた。

4.   「特発性肺線維症(IPF)の病態」の解明:IPF患者肺組織中の小葉内肺胞毛細血管の異常な増殖と同時に、小葉間の線維化病変では毛細血管が消退することを初めて示した(AJRCCM(以前のARRD) 2004; 396回)。この論文の独創性の高さがまたATSで評価を受けて、2005年のSan Diegoで開催されたATS100回記念の“Meet the Professor”で講演し、有料の聴衆席は完売となった。また、2007年にはPittsburgh Univの肺の分子生物学の大家であるKaminski教授の招待で学内で二日間の講演を、さらに続いてNIHのTranslational Medicine Branch, National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLB)でもまた二日間の講演をさせていただいた。その後新たに、小葉間リンパ管が線維化に伴い消退し(Lymphat Res Biol 2010;63回),このために急性肺損傷の原因物質”HMGB-1”が肺内残留することが、IPF患者の致死性急性増悪の病態機序である可能性を示した(Pulmonary Med 2011;95回)。「IPF患者の急性増悪の病態とその新しい治療戦略」に関しては2013年にPhiladelphiaで開催された108回目のATSで2回目の“Meet the Professor”で講演し、有料席はまた完売となった。

5.   「動物モデルを用いた遺伝子導入実験」:   帰国後の医局は遺伝子導入実験が研究の中心テーマであった。当時主流のアデノウイルスを使って、大学院生の学位論文として、主要な線維化促進因子であるTGF-bを制御する生体内物質”decorin”の発現遺伝子導入(Am J Physiol 2003;65回)を発表したものの、臨床的には感染を引き起こして線維化を悪化させる可能性もあるウィルスを介した遺伝子導入を避けて、新しい遺伝子導入手段を模索した。その結果、臨床生理検査である「肺血流シンチグラフィー」に用いる「巨大凝集アルブミン(macroaggregated albumin; MAA)に「カチオン性ポリマー」を結合させた“MAA-PEI”を介して、肺胞毛細血管内皮細胞から肺胞上皮細胞にHGF発現遺伝子導入による肺線維化抑制効果(Mol Ther 2005;121回)などの実験的治療を発表した。(このMAA-PEIを介した肺胞上皮細胞へのHGF遺伝子導入療法は、HGF自体に発がん性が危惧されて臨床応用には進めなくなった。しかしこの論文が2025年1月5日付のJCIに,著名なDavid A Schwarts教授によるReview, ”Progressive Pulmonary Fibrosis" (僕が20年近く前、世界で初めて、意識的に使い始めた疾患名を見てまず驚いた)に引用されているのを見て感動した。誰も肺に使ったことのない遺伝子導入法を使ってHGF遺伝子を肺胞上皮細胞に送り込み、僕がNCI留学中に開発したin situ PCRを用いて肺胞上皮細胞の核内への導入を証明した思い出深い論文。大学院生の実験指導から英文論文投稿を含めての大変な苦労と興奮を懐かしんだ)

<ここまでの研究業績で、2007年度日本呼吸器学会「熊谷賞」を受賞>

「熊谷岱蔵(たいぞう)」先生は東北帝国大学医学部第一内科初代教授であり、亡くなられた後にこの学会賞ができた。結核の撲滅に努められ、後に文化勲章を受賞。彼の薫陶を受けて後を継いだ僕の大叔父「海老名敏明」は、戦前に3年間ドイツの「コッホ研究所」に留学し、帰国後すぐに、結核の基礎と臨床の研究に欠かせない「抗酸菌病研究所とその附属病院」を東北帝国大学内に設立することに奮闘した。そして自ら「BCGワクチンの凍結真空乾燥法」を開発して、それまでの脆弱な液性の生ワクチンだったBCGワクチンを、力価を保ったまま粉末化させることで、様々な環境下でも長時間安定させることに成功し、国内外の経済的に貧しい地域の多くの幼若な人達をも結核感染から守って、結核の世界的な蔓延化を防いだ。国立研究所内での発明だったので特許取得は許されなかったが、達者なドイツ語で研究経過を記載した数多くの論文が、すでに欧米でその独創性と功績が評価され、戦後になって「コッホ研究所」の再興とともに、ノーベル生理学・医学賞受賞との関連が近年話題となっているドイツの「ロベルト コッホ賞」の第1回(1961年)の受賞者となった。どんな偉大な研究でも、欧米の著名な研究誌に論文が掲載されて、再現性が検証されないと、その業績は永遠に認められないことを胸に刻んだ)

6.   共同研究の依頼を受けた基礎研究:基礎研究としては、なかでも「鳥インフルエンザによる急性肺障害」の病態機序解明(Nature 2006)は、広域な世界の日常生活に深くかかわる深刻な問題の原因解明につながる研究で、2046回という引用数を現在もさらに更新している。

<ここまでの研究業績で、2008年度 東北大学医学部奨励賞「金賞」を受賞>

 また、肺胞腔内の肺胞マクロファージ の機能低下による「肺胞蛋白症」のほとんどが、自己免疫異常によるGM-CSF欠乏が原因であるとされるが、GM-CSFとはかかわりのない2つの異なる遺伝子、”Ranx1””Bach2”の改変マウスにおける「肺胞蛋白症」の病態解析(順に、J. Immunol 2012; 74回. J Exp Med 2013; 151回)をそれぞれ東北大学内の別個の基礎研究部門で行った。

 7.   厚労省の難治性疾患克服研究班:臨床研究を中心とした多数の研究班に参画し、「進行性肺線維症」「肺胞蛋白症」「リンパ脈管筋腫症」などの多施設臨床治験や国内外のガイドライン策定に協力した。なかでも欧米日各国学会によるIPFのガイドライン(AJRCCM 2011)の引用数は9644回とすさまじい。関係する治療試験の発表は現在に至るまで続いていて、その成果を楽しんでいる。

 また、帰国後の研究成果に関して、国内各地での学会や研究会、ほぼ毎年だった米国ATSや欧州ERS,5回にわたるAPSR(アジア太平洋呼吸器学会)などで、ほぼすべてが僕自身の実験や臨床データに基づく様々な肺疾患の病態理解で、多くの講演をさせていただき、国内外の多くの研究者と知り合うこともできて、とても楽しい期間を過ごさせていただいてきたことに感謝している。

 減ることはないGoogle Scholarによる論文引用回数の増加を確認するにつれ、これまでの自分の研究成果が現在の医学研究の進展に役立っていることが感じられて嬉しい。


学歴

  2

委員歴

  22

受賞

  9

論文

  163

MISC

  447

書籍等出版物

  122

講演・口頭発表等

  325

担当経験のある科目(授業)

  16

Works(作品等)

  15

共同研究・競争的資金等の研究課題

  28

学術貢献活動

  1

社会貢献活動

  15

その他

  8
  • 2019年7月 - 2019年7月
    一般講演:仙台厚生病院 木村雄一郎呼吸器内科部長 特別講演1:天理よろず病院 野間恵之放射線部特定部長 「特発性肺線維症の画図診断の変遷」 特別講演2:東京医科大学病院 阿部信二呼吸器内科主任教授 「特発性肺線維症の治療戦略」
  • 2019年4月 - 2019年4月
    MS112 長崎大学「びまん性肺疾患に対するTransbronchial Lung CryobiopsyとSLBの比較検討」 MS113 名古屋大学「深層学習を用いたIPF診断アルゴリズム」 MS114 大阪大学「新薬創出を加速するAIの開発・IPFへの取り組み」 MS115 東邦大学「IPFの重症度と予後の関係」 MS116 東邦大学「IPF急性増悪のスコアリングシステムによる重症度作成の試み」
  • 2018年10月 - 2018年10月
    演者1:天理よろず相談所病院 呼吸器内科 田口善夫部長 治療を中心に考えたIPF診断とオフェブの有用性 演者2:福島県立医大病院 呼吸器内科 谷野功典准教授 IPF治療における運動負荷試験の重要性
  • 2018年6月 - 2018年6月
    天理よろず相談所病院 呼吸器内科 田口善夫部長
  • 2018年5月 - 2018年5月
    IPF基調講演:札幌医科大学呼吸器内科 千葉弘文准教授
  • 2018年4月 - 2018年4月
    2018年4月29日 第58回日本呼吸器学会学術講演会 (京都) ランチョンセミナー 座長 多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎の実際 LS25-1 東海大学内科学リウマチ内科学 佐藤慎二准教授 LS25-2 浜松医科大学内科学 第二口座 須田隆文教授
  • 2018年2月 - 2018年2月
    仙台厚生病院 木村雄一郎呼吸器内科部長「抗線維化療法の実際」 慈山会医学研究所付属坪井病院・間質性肺炎・肺線維症センター 杉野圭史センター長「間質性肺炎の診断と治療」
  • 2018年2月 - 2018年2月
    日本医科大学大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野 桑名正隆教授 特別講演「膠原病内科医からみた間質性肺疾患 -強皮症・筋炎と IPAF」