論文

査読有り 最終著者
2019年12月

上顎洞に発生した歯原性粘液腫に医科歯科連携で対応した1症例

日本総合歯科学会雑誌
  • 安丸 功基
  • ,
  • 鵜飼 孝
  • ,
  • 小関 優作
  • ,
  • 照崎 伶奈
  • ,
  • 田中 利佳
  • ,
  • 角 忠輝

11
1
開始ページ
99
終了ページ
103
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
出版者・発行元
日本総合歯科学会

今回,上顎洞に発症した比較的まれな疾患である歯原性粘液腫に対し,医科歯科連携による治療を経験したので若干の文献的考察と合わせ報告する。患者は33歳女性で,右側頬部の疼痛を主訴に長崎大学病院耳鼻咽喉科を受診し,右側歯性上顎洞炎疑いで当科紹介となった。視診,電気歯髄診断,X線写真,CBCT画像では歯性上顎洞炎を疑う所見を認めず,耳鼻咽喉科へ歯性上顎洞炎の可能性は低いことを連絡した。その後,耳鼻咽喉科にて右側上顎腫瘍の疑いで生検が行われ,病理診断の結果,上顎洞に発生した粘液腫と診断された。耳鼻咽喉科にて摘出手術が行われた際に上顎右側第二大臼歯の歯根が腫瘍と癒着していることが確認され歯原性粘液腫と診断された。その後,当科にて上顎右側第二大臼歯の抜歯を行った。抜歯時に上顎洞との交通が確認され,抜歯後3週間経過しても瘻孔は閉鎖しなかった。摘出手術後から継続していた鼻洗浄が原因ではないかと考え,耳鼻咽喉科へ鼻洗浄の一時中断を依頼し,鼻洗浄中断後1週間で瘻孔は著明に閉鎖傾向を示した。術後7ヵ月を経過した現在,腫瘍の再発は認めず経過良好である。しかし,顎骨粘液腫の手術後の再発率は高く2年以内の再発が多いと報告されているため,引き続き経過観察が必要である。今回の症例を通して良好な治療結果を得るために医科歯科が共同で適切な診断を下し,協力して治療することの重要性を再認識できた。(著者抄録)

ID情報
  • eISSN : 2189-938X
  • 医中誌Web ID : 2020149526

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