共同研究・競争的資金等の研究課題

1993年4月 - 1996年3月

5-FU少量持続静注と放射線の同時併用療法に関する基礎的、臨床的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 一般研究(B)  一般研究(B)
  • 酒井 邦夫
  • ,
  • 大久保 真樹
  • ,
  • 杉田 公
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  • 伊藤 猛
  • ,
  • 末山 博男
  • ,
  • 藤田 勝三
  • ,
  • 樋口 正一
  • ,
  • 小田 純一

課題番号
05454301
配分額
(総額)
4,700,000円
(直接経費)
4,700,000円

基礎的研究においては、5-FUおよびCDDPそれぞれ単独の放射線増感効果、ならびに両者を併用した場合の放射線増感効果について、FM3A細胞を用いて検討した。得られた結果は次のとうりである。(1)5-FU低濃度長時間処理(0.5μg/ml、24時間)と放射線照射のタイミングを変えて実験したところ、5-FU処理開始直後に照射を行った場合の増感効果がもっとも高いことが判明した。この場合のD_0は1.9Gy、Enhancement Ratio(ER)は1.16であった。(2)CDDP高濃度短時間処理(1.0μg/ml、1時間)のD_0は2.2Gy、ERは1.00であったが、低濃度長時間処理(0.1μg/ml、24時間)のD_0は2.1Gy、ERは1.05であった。(3)5-FU(0.5μg/ml、24時間)とCDDP(0.1μg/ml、24時間)の両者を同時に併用すると、D_0は1.7Gy、ERは1.30となった。すなわちCDDPには、それ自身の放射線増感効果のほかに、5-FUの放射線増感効果を増強する作用のあることが示唆された。
臨床的研究においては、手術不能食道癌を対象として、5-FU少量持続静注(300mg/m^2/day)と放射線の同時併用療法を行い、副作用ならびに局所効果を検討した。本療法の主たる副作用は嚥下痛、食欲不振等であるが、多くの症例は治療の継続が可能であった。5週以上にわたる5-FU持続静注ならびに60Gy以上の照射が可能であったものを治療完遂とすると、本療法の治療完遂率は89%であり、放射線単独治療の場合と差のないことが示された。遠隔転移のない食道癌を対象として、局所制御に関与する因子について多変量解析を行ったところ、治療法とT因子に有意差が認められ、また生存率に関する多変量解析におおて、治療法が有意な因子として検出された。以上の結果から、本療法は食道癌の局所制御率を向上させると同時に、生存率の向上も期待できる有用な治療法であると考えられた。今後5-FU+CDDP少量持続静注と放射線の同時併用について検討の予定である。

ID情報
  • 課題番号 : 05454301