共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2023年3月

日本統治下の台湾におけるラジオ文化に関する歴史社会学的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K02141
体系的課題番号
JP19K02141
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

2020年度においては、前年に引き続き、日本統治時代の台湾におけるラジオ放送の聴取者に関する分析を行った。
近年、過去の産業や文化を現代に伝える遺構の一つとして注目されているラジオ塔に着眼し、日本統治下の台湾におけるラジオ聴取のあり方について考察した。日本国内では1930年に大阪・天王寺公園に設置されたものが嚆矢であると考えられている。また、戦争の進行とともに、満洲や、ジャカルタ、広東といった日本が占領した地域でラジオ塔が設置され、住民への宣撫活動が実施されたことが知られている。
台湾では、「二二八和平公園ラジオ塔」(台北市、1934年建塔)、「台中公園ラジオ塔」(台中市、建塔年不明)、「屏東公園ラジオ塔」(屏東市、1939年建塔)の3基が現存している。設置後には、ラジオ塔を取り囲むように、ラジオ体操の会が実施されるなど、当時設置されたラジオ塔は、当初はラジオ放送を宣伝し契約者を増やすための方策であったと考えられる。しかし、1940年には全島市郡にラジオ塔の設置を求める論説が雑誌に出るなど、日中戦争の進行を受け、ラジオ契約者の比率の少なかった「本島人」に、半ば強制的にラジオ放送を聴かせる手段として捉えられていたと考えられる。つまり、「思想戦」を勝ち抜くためにラジオ放送を活用し、ラジオの聴取契約をしていない者や家庭にいない者にも、政府や軍部の方針を周知徹底するためにラジオ塔の設置が叫ばれるようになったである。ただ、その後は、地域の集会所にラジオ受信機が設置されたり、国内の隣組にあたる「奉公班」などを活用した集団的聴取が検討された。戦況が悪化する中で、より効率的な方策が用いられたため、ラジオ塔の役割は後退したと考えられる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02141
ID情報
  • 課題番号 : 19K02141
  • 体系的課題番号 : JP19K02141

この研究課題の成果一覧

書籍等出版物

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