MISC

2018年7月19日

高度に官能基化された単環性phloroglucinol類の全合成

天然有機化合物討論会講演要旨集
  • 西村 栄治
  • ,
  • 大船 泰史
  • ,
  • 品田 哲郎

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記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
天然有機化合物討論会実行委員会

<p>Triumphalone (1)およびisotriumphalone (2)はMelaleuca triumphalisの精油から単離された天然有機化合物である.<sup>1)</sup> 同じMyrtus属の植物, M. communisからは1のジオール部位がトランスに配置された3 (no name)が単離されている(Figure 1).<sup>2) </sup>1の構造は相当するジニトロベンゾエート体のX線構造解析によって決定された.2は1に10%含まれるマイナー成分として認識されていたが,Brophyらはこの混合物を24ヶ月放置したところ,2の含量が10%から70%に増加したと報告している.2の構造は混合物のNMR解析をもとに6員環の1,4-ジケトンであると推定された.また,生合成仮説としてアルキル基の1,2-転位機構を提唱している.これら天然物はphloroglucinolが高度にアルキル化・酸化された天然物に分類される.Phloroglucinol類には構造多様性に富んだ数多くの化合物が含まれているが,その中でも,1-3のようなモノメリックな炭素骨格が高度に官能基化され,かつ不斉中心を備えたものは単離例がきわめて数少ない.今回,我々は1-3の特徴的な構造と,類縁の単環性phloroglucinol類 5がさまざまな生物活性を示すこと,<sup>3)</sup>および1-3の全合成が未だ報告されていないことから,これら天然物の立体選択的かつ効率的な全合成研究を開始した.その結果,1-3の初となる全合成を達成した.あわせて,3の構造確認とisotriumphalone (2)の構造が4であることを明らかにしたので報告する.</p><p>合成計画</p><p>Phloroglucinol (6)から出発し,アルキル側鎖を導入したメチルエーテル体7へと変換する.7を鍵中間体として,1は不飽和ケトン8のオスミウム酸化にて,トランスジオール3は3級アルコール9のジアステレオ選択的なヒドリド還元にて作り分けることを計画した.また,Brophyらの提唱した生合成仮説をもとに,2は1のバイオミメティックな転位反応により,一段階で合成できると考えた(Scheme 1).</p><p>メチルエーテル体7a, 7bの合成</p><p>まずアルキル基導入のため,シンカルピン酸10に対する直接的なアルキル化による13の合成を試みた.既知の方法により6を2段階で10へと導いた.<sup>4)</sup> 10に対してn-ペンチル基およびイソブチル基をもつアルキルハライドを求電子剤として用い,アルキル化を試みた.しかし,O-アルキル体が主成分として得られ,望むC-アルキル体は全く得られなかった.そこで,段階的なアルキル化に切り替えた.valeryl chlorideを用いたフリーデルクラフツ反応により6をアシル体11aへと変換した.次いでNaOMe存在下,テトラメチル化して12aを得た.側鎖カルボニル基の位置選択的還元はSmithらの方法<sup>5)</sup>を参考に,12aを2.5当量のNaBH<sub>3</sub>CNで処理することで達成し,アルキル化体13aとした.13aは塩化オキサリルによりクロロ化後,NaOMeを作用させメチルエーテル体7aへと変換した.また,側鎖アルキル基をイソブチル基に切り替え,6から同様に7bへと導いた(Scheme 2).</p><p>Triumphalone (1)の全合成</p><p>7aをDIBAL還元の後,酸処理して14へと変換した.生じた2級アルコールの酸化により不飽和ケトン8へと導いた.これを化学量論量のOsO<sub>4</sub>で処理することで,シスジオールを構築した.得られた生成物の各種スペクトルデ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

リンク情報
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http://ci.nii.ac.jp/naid/130007399404
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  • CiNii Articles ID : 130007399404
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