松岡 裕之

35年にわたりマラリアの研究をやってきました．マラリアというのは多くの途上国の人々を死に追いやっている疾患で，世界では日本人の年間総死亡数と同じくらいの死亡数を出していると思われます．WHOをはじめ世界各国が努力して今世紀になり，ようやく罹患者数や死亡者数が減少してきた模様です．生物としてのマラリア原虫の魅力はますます増していますが、その死亡者数を減らすためにこの世界にいた私としては、思いを遂げた気もします。
60歳を機に研究者の道を離れ、公衆衛生医として働くことを決意しました。ふるさとである信州の伊那谷に42年ぶりに戻り、美しい伊那谷の風景に見とれながら、健康づくり・精神科対応・難病者支援・結核封じ込め・食中毒調査などに尽くしています。マラリアも公衆衛生的アプローチが有効でしたので、あまり違和感なく働けています。これまでとは違った角度からの研究を行ない、その成果を引き続き発信してゆくつもりです。