MISC

2018年5月

結核菌表層糖脂質誘導体の口腔バイオフィルム形成に与える影響

BACTERIAL ADHERENCE & BIOFILM
  • 長谷川 泰輔
  • ,
  • 竹中 彰治
  • ,
  • 小田 真隆
  • ,
  • 鈴木 裕希
  • ,
  • 坂上 雄樹
  • ,
  • 大墨 竜也
  • ,
  • 野杁 由一郎

31
開始ページ
29
終了ページ
34
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
日本バイオフィルム学会

殺菌に頼ったバイオフィルム(BF)制御は口腔細菌叢の変化の懸念があるだけでなく、付着界面にBF構造が残存し、BF再形成の足場となる可能性が指摘されている。本研究では、結核菌の表層糖脂質をリード化合物として創製した機能性糖脂質(硫酸化ビザンチン:Viz-S)が、ヒト唾液由来細菌のex vivoモデル上でのBF形成に与える影響について検討するとともに、初期定着菌に対する付着抑制効果について検討した。Sub-MIC量のViz-S存在下で24時間培養後のex vivoBF量をクリスタルバイオレット(CV)法で定量したところ、BF量は50μM以上で有意に減少した。蛍光染色を施し、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)観察を行うと、Viz-SはBF中の細菌に殺菌効果を示さず、BF量は濃度依存的に減少した。初期定着菌に各濃度のViz-S溶液を10分間作用させたのち菌体表面性状を評価したところ、100μMにおいて疎水度は有意に低下した。また、50μMもしくは100μMのViz-Sで10分作用後のStreptococcus mutansのガラス表面への細菌付着量をフローセルを用いて解析したところ、ガラス界面への付着量は濃度依存的に減少していた。さらに、Viz-Sを蛍光標識し、S.mutans菌液と混合したのち蛍光顕微鏡観察すると、リング状に蛍光を発する菌体が観察された。これらのことから、Viz-Sはsub-MIC量において細菌壁表層の性状を親水性に変化させることで付着減弱効果を与え、菌種非特異的にBFを易剥離性に変化させることが示唆された。Viz-Sは口腔細菌叢を変動させない新しいBF制御剤として有用である可能性が示された。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 1348-6071
  • 医中誌Web ID : S608060008

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