2019年4月 - 2022年3月
遺伝子改変ラットを用いたビタミンD作用の解明とビタミンD誘導体の医薬品応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
ビタミンDは、活性型である1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D3)がビタミンD受容体(VDR)に結合して種々の生理作用を示すと考えられてきたが、近年、25-ヒドロキシビタミンD3(25D3)の直接作用やVDRを介さない作用、リガンド非結合型VDRの作用の存在を示唆する研究が報告されている。我々はこれまでに、ゲノム編集法により遺伝子改変ラット ①CYP27B1-KO, ②変異型ビタミンD受容体VDR(R270L), ③VDR-KOを作出し、ビタミンD作用メカニズムの解明を目指してきた。これらのラットはいずれも骨形成不全・骨形態異常を示し、VDR-KOラットでは脱毛と皮膚の形成異常が見られた。今回、新たに④H301Qおよび⑤二重変異VDR(R270L/H301Q)をもつラットの作出を試みた。また、細胞レベルで変異型VDRの機能を解析するため、多種多様な動物細胞に高い感染力を示すアデノウイルスベクターを用いて野生型VDR、R270L、H301QあるいはR270L/H301Q 発現用アデノウイルスベクターを作製し、ゲノム編集法により作製したVDR遺伝子欠損細胞に感染させ、培地に25D3あるいは1,25D3を添加してVDRの核内移行を調べたところ、R270L/H301Qは核内移行が観察されず、リガンドに不応答性であることがわかった。現在、片方のアレルにR270L/H301Q、片方のアレルにH301Qを有するラットの作製に成功しており、それぞれhomo接合体を作製する予定である。野生型および5系統の遺伝子改変ラットの性状を比較することにより、ビタミンD作用の詳細なメカニズムの解明が期待される。また、ラットCYP27B1発現アデノウイルスベクター作製に成功した。これをCYP27B1-KOラットに投与して、くる病症状の改善がみられるか調べる。
- ID情報
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- 課題番号 : 19H02889
- 体系的課題番号 : JP19H02889