1995年5月
褐毛和種の枝肉形質に関する経済的価値の年次変化
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science
- ,
- 巻
- 66
- 号
- 5
- 開始ページ
- 456
- 終了ページ
- 461
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- DOI
- 10.2508/chikusan.66.456
- 出版者・発行元
- Japanese Society of Animal Science
肉牛の育種改良を行なう場合,改良の対象となる形質の経済的価値に関する情報は必要不可欠である.しかし,一般に経済的価値の推定に用いられる枝肉価格は景気の動向や周辺の事情により不安定に推移している.そこで牛肉の輸入自由化や価格変動によって,枝肉形質に関する経済的価値がいかに変化しているかを検討した.材料は1988年から1992年までの5年間に出荷された褐毛和種去勢肥育牛8,107頭のフイールド記録を用いた.評価項目として想定した1日当り増加額,単価,売上価格,利益を従属変数とし,枝肉重量,脂肪交雑,ロース芯面積,ばら厚,皮下脂肪厚の5形質を独立変数とする重回帰分析を年および月別に行ない,各形質に関する通常の経済的重み付け値(偏回帰係数)および標準化経済的重み付け値(標準偏回帰係数)を計測した.その結果,枝肉重量に関する経済的重み付け値および標準化経済的重み付け値は,8ケースのうち6ケースで年次効果が有意で,しかも,年次に伴って低下する傾向が認められた.脂肪交雑に関する経済的重み付け値は,従属変数にかかわらず年次と月の効果が有意となり,年次に伴って向上し,月別では年末に大きくなる傾向が認められた.標準化経済的重み付け値は,単価を除く従属変数に関して年次効果が有意で,年次に伴って大きくなる傾向にあった.ロース芯面積に関する経済的重み付け値は,1日当り増加額,利益について年次効果が認められ,標準化経済的重み付け値は,全ての従属変数について年次効果が有意であった.ばら厚と皮下脂肪厚に関しては,経済的重み付け値および標準化経済的重み付け値のいずれも年次や月の効果に有意差が認められなかった.以上の結果より,褐毛和種の枝肉形質に関する経済的価値は,牛肉の輸入自由化前後の5年間で大きく変化し,脂肪交雑の経済的価値が顕著に高くなり,逆に品種の特性である発育形質に関する経済的価値が低下していることが示された.
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.2508/chikusan.66.456
- ISSN : 1346-907X
- CiNii Articles ID : 10024580786
- CiNii Books ID : AN00195188