2004年2月
スペインにおける「読書へのアニマシオン」の源流と拡大状況
山形大学紀要 教育科学
- 巻
- 13
- 号
- 3
- 開始ページ
- 193
- 終了ページ
- 204
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 山形大学
「読書へのアニマシオン」は, スペインの読書指導方法で, 1980年代初めにスペインのジャーナリスト, モンセラット・サルトによって開発された。1997年に翻訳書が出版されて以来, 我が国の国語教育においても, 教室の実践あるいは国語の授業としての実践が増えてきている。しかし, この本質は十分に解明されておらず, 実践上の問題点や解決策も十分に検討されているとはいえない。そこで, 本稿では, スペインにおいて, アニマシオンにかかわっている研究者, 教師, ジャーナリスト, 俳優, 司書, 出版関係者, 書店関係者への複数回にわたるインタビューを通して, アニマシオンのスペインにおける歴史を描き出すことで, その特徴と問題点を明らかにした。 アニマシオンの発生は, 20世紀初めの図書館員のストーリーテリングにさかのぼることができる。市民戦争後の図書館の大衆化にともなって, 複数の図書館員が, 子供の読書促進するための手法としてストーリーテリングを用いるようになった。また, ストーリーテリングはスペインでは伝統的に, 俳優のパフォーマンスの一種として認められている。しかし, このようなパフォーマンスだけで全ての子供を読書に接近させることは難しいとサルトらは考え1980年代に多くの作戦と呼ばれる手法からなる, アニマシオンの方法を開発した。1990年代になって行われたサルトのセミナーでは, 数多くの教師や親やその他子供の読書に関心がある者が, このアニマシオンの方法を学んだ。そして, 彼らはそれぞれの立場に応じて, アニマシオンの方法を拡大していった。 これらの歴史の概観を通して明らかになったことは, 次の2つの問題点である。1)アニマシオンにはストーリーテリングのようなパフォーマンス要素があることと, 2)アニマシオンが学校の教科カリキュラムとして, 位置づけられていないということ, である。これらの問題を解決するためには, 教師がどのようにパフォーマンス能力を高めるか, また, カリキュラムにどのように位置づけるかということを考える必要がある。
- リンク情報
- ID情報
-
- ISSN : 0513-4668
- CiNii Articles ID : 110001074160
- CiNii Books ID : AN00242980