2017年4月 - 2022年3月
敗血症性脳症の非侵襲計測と分子病態の統合解析による積極的治療介入の再考察
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
本研究の目的は救急医療の現場において重症敗血症の生存者におこる敗血症性脳症に焦点を当てる。有効な生体指標を見出し、敗血症性脳症の積極的治療介入方法を探索することにより、従来の対症療法を主とした治療法を再考察する。本年度は、当初の研究計画に基づき、敗血症性脳症の網羅的統合解析から敗血症性脳症の分子病態解明に役立つ新たな生体指標を見出した。具体的には下記の実験を行った。マウスを正常群、病態群、治療介入群にわけ、脳の海馬を摘出した。脳の海馬は敗血症患者がしばしば呈するせん妄症状において変化が顕著という先行研究がある。本研究では病態誘導、治療介入は炎症誘発物質を腹腔内投与し24時間後に治療介入を加えた。各々の標本群からタンパク質を抽出し、溶解液に懸濁させる。各標本の基準タンパク質量をそろえたのち、脱塩処理、フィルター処理等を経て質量分析計(LC-MS;サーモサイエンティフィック社製、QExclusive)を用いて病態および治療介入により顕著にタンパク質量が変動する分子群を測定した。その結果、2014種類の変動するタンパク質を見出した。標準タンパク質によりデータをノーマライズした結果、98種類のタンパク質群が病態誘導によりその発現量を顕著に変化させることがわかった。またそれらのタンパク質群は治療介入により正常群と同じレベルに回復することも分かった。98種類のタンパク質群は、それぞれ脳のイオンチャネル制御、可塑性の制御、オートファジー制御などの分子群を含んでいた。さらに、これらのタンパク質群の中にはこれまでの研究で着目されなかった多くのタンパク質群を含み、新しい生体指標が見出されることが期待される。以上の測定および解析は理化学研究所脳神経科学センター(CBS)のRRDユニットの支援を受けて行った。最後に本年度の研究に関わる報告は原著論文3報、総説1報、学会発表2報を国際誌等に報告した。
- ID情報
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- 課題番号 : 17H04364
- 体系的課題番号 : JP17H04364
この研究課題の成果一覧
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論文
3-
International Journal of Tryptophan Research 14 1-22 2021年5月 査読有り
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Scientific reports 10(1) 4034-13182 2020年2月12日 査読有り
講演・口頭発表等
1-
第49回 日本集中治療学会 2022年3月18日 招待有り