MISC

2008年12月

Staphylococcus epidermidisのステンレス鋼表面に対する付着に及ぼす諸因子の影響

日本食品工学会誌
  • Ortega Melba Padua
  • ,
  • 萩原 知明
  • ,
  • 渡辺 尚彦
  • ,
  • 崎山 高明

9
4
開始ページ
251
終了ページ
260
記述言語
英語
掲載種別
出版者・発行元
日本食品工学会

食品製造機器表面に対する微生物の付着は、一般に除去および殺菌が困難とされるバイオフィルム形成の初期段階ともなるため、食品製造現場の衛生を保つ上で極めて重要な研究課題である。しかし、これまでの研究報告では対立する結果が報告されている例も少なくなく、微生物の機器表面への付着に対する各種因子の影響を統一的に解釈できる状況には至っていない。菌種による表面特性や付着様式の差異が影響している可能性もあり、より多くの菌種に対する検討結果の蓄積が望まれる。本研究では、食品製造現場で検出されることが少なくない表皮ブドウ球菌Staphylococcus epidermidisを対象としてとりあげ、そのステンレス鋼表面に対する付着挙動について検討した。付着実験は、表皮ブドウ球菌の懸濁液にステンレス鋼板を浸漬する形で行い、拭き取り法とコンタクトプレート法を合わせた方法によりステンレス鋼板上に付着した菌数を計数した。なお、表皮ブドウ球菌の付着に影響を及ぼす因子として、菌懸濁液の初期菌濃度、懸濁媒体の成分、ステンレス鋼表面の粗さに着目した。初期菌濃度10(2)-10(4)CFU/mlの範囲では、付着実験開始30分後には低レベルながら菌の吸着が見られた。付着菌数はその後徐々に増加し、3時間後までには最大値となり、それ以降は有意な付着菌数の変化は見られなかった。この間、懸濁液中の菌濃度は変化することなく、したがって付着菌数の増加は増殖によるものではないことが示された。また、ステンレス鋼表面に付着した菌の表面密度が懸濁液中の菌濃度にほぼ比例していた。懸濁媒体の影響については、有機物の存在が付着菌の表面密度を増加させることが示された。さらに、表面粗さの大きなステンレス鋼表面(Ra=1.37μm)に付着する菌数は、滑らかな表面(Ra≦0.14μm)に比べて有意に多いことが明らかになった。なお、このように付着した菌に対して撹拌槽を用いた脱離実験を行ったところ、撹拌によるせん断力を加えても、脱離した菌の割合は50-82%に留まり、少なくとも付着菌の一部は不可逆的に付着していることが示された。さらに、菌の付着状況を走査電子顕微鏡で観察したところ、とくに表面粗さの大きなステンレス鋼表面では、比較的深い研磨痕(クレバス)に表皮ブドウ球菌がクラスタを形成して付着している割合の高いことが判明し、研磨痕や損傷による表面の凹凸の深さが表皮ブドウ球菌の付着に大きな寄与をすることが示唆された。

リンク情報
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http://ci.nii.ac.jp/naid/120005318768
ID情報
  • ISSN : 1345-7942
  • CiNii Articles ID : 120005318768
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000004418966

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