共同研究・競争的資金等の研究課題

2004年10月 - 2008年3月

開発援助の人類学的評価法

国立民族学博物館  国内共同研究  
  • 鈴木紀

資金種別
競争的資金

本研究は3年半にわたり、計16回の研究会を開催し、のべ34人が研究発表をおこなった。研究会のメンバーに国際協力機構や国際協力銀行などの援助実施機関の職員を加え、招聘講師の形でもこれら実施機関の職員や開発コンサルタントを頻繁に招いて、研究に実務者の視点を取り込むよう努めた。また国立民族学博物館が実施した開発協力に関する国際ワークショップにも研究会として参加し、欧米諸国におけるに開発援助活動への人類学者の貢献について学んだ。その結果あきらかになったのは次の点である。 第一の研究目的(開発援助活動を推進するために必要な人類学の役割)については、以下の4点が確認された。1)人類学が開発援助活動に貢献するための基本は、開発途上国の住民(援助の受益者)が援助活動をどのように理解し、それに対してどのように行動するかを調査分析することである、2)分析に際しては全体論的視点を意識し、単一の因果関係に終始せず、多様な因果関係を検討することが望ましい、3)受益者の行動を理解する際に特に重要なのは、開発援助プロジェクトの受益者側リーダーシップの構築プロセスに着目する、4)研究の基本は、各人類学者が専門的に研究してきた地域、文化を対象におこなわれる開発援助活動の記述、分析であるが、特定開発セクターに関する通文化的比較を試みることも必要である。 第二の研究目的(人類学の研究成果を開発援助活動に導入するための方法)については、以下の3点が確認された。1)開発援助実施機関は現在、プロジェクト評価を重視しているため、人類学者も何らかの形で評価を語ることが、両者の対話を促進させるために有効である、2)そのためには既存のプロジェクト評価手法(PCM手法など)に精通し、それを批判的に理解するだけでなく、人類学者の研究成果を導入することでどのように改善できるかを示すことが必要である、3)人類学者と開発援助実務者が相互に信頼関係を築くためには、人類学者の側が自らの概念や用語を実務者の概念や用語と対応させて表現する工夫が必要である。