2018年6月 - 2020年3月
概日時計を介するUV適応体制と細胞代謝の時間的調整
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
概日リズムは多くの生物に共通して見られる生理学的性質だが,バクテリア,菌類,植物,動物で使われている中枢時計遺伝子には共通性が乏しく,各々平行進化で獲得されてきたと思われる。一方,時間生物学黎明期の重要な研究者として知られるColin Pittendrighは,昼間の紫外線からDNAのダメージを回避するために,細胞分裂のタイミングを制御する必要から概日システムが進化してきたとの仮説を唱えた。実際,UVと概日システムの間にはいくつかの関連が指摘されている。たとえば,紫外線からDNA複製エラーを修復するために機能するPhotolyaseの類縁蛋白質Cryptochromeは時計同調に関わる青色受容体もしくは時計中枢の転写抑制因子として機能することが知られている。また,緑藻類のミドリムシやクラミドモナスでは,UV耐性(ないしUV感受性)に概日リズムが報告されている。しかし,どのような機構で中枢時計がUV耐性リズムを駆動しているのか,その分子的な実態はいかなる生物でも明らかにされていない。一つには,UV耐性リズムの報告されている緑藻類では,まだ中枢時計の分子解析に未解明の部分が多いことが考えられる。そこで,私たちは,単細胞性シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942に着目し,UV耐性リズムの有無と,あるとすればそのメカニズムを解析することを意図した。予備的段階で,私たちはSynechococcusが特定の条件で顕著なUV耐性リズムを示すことを明らかにし,それが時計遺伝子群kaiABCの制御下にあることを発見した。今年度はそのリズムについて分子遺伝学的な解析を行い,グリコゲン代謝とUV耐性に密接な関係があることを示した。
- ID情報
-
- 課題番号 : 18K19349
- 体系的課題番号 : JP18K19349