2017年4月 - 2021年3月
無機硫黄化合物の酵素化学の確立とその応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
鉄硫黄酸化細菌の一種 Acidithiobacillus ferrooxidans を研究の対象とし、硫黄化合物を代謝する酵素であるテトラチオン酸ハイドロラーゼ(4THase)について詳細な研究を行った。この4THaseは、無機硫黄化合物の加水分解反応を触媒し一部の好酸性微生物にのみ確認されている極めてユニークな酵素である。当該研究では既に、A. ferrooxidansの4THase遺伝子(Af-tth)を世界で初めて同定し、これを大腸菌組換え発現で得た封入体から酸性refolding処理により活性型酵素を獲得する新規な手法を開発し、その結晶化にも成功した。
本研究にて得られたAf-Tth結晶をSPring-8を利用したX-線照射実験で1.75オングストロームの解像度で結晶構造データを回収することができた。基質のテトラチオン酸を浸漬した結晶のX-線照射データの解析から本酵素の反応機構を推測した。Af-Tthは他の硫黄代謝関連酵素で見られるCys依存性の反応機構とは全く異なり、Asp325の基質へのプロトン供与による加水分解メカニズムであることを解明し、部位特異的変異酵素(D325N)の活性の消失からこれを証明した。
また、さらなるX-線結晶構造解析の結果、上記のAsp325付近から伸長する硫黄のオリゴマーと推定される電子密度、およびこれを捕捉する様な構造を持つ3つのメチオニン残基の存在を発見した。この3つのメチオニン残基は、本酵素における極めて特徴的な構造であり、他の好酸性微生物に由来する4THaseにも保存されている。まずはこのMet残基が捕捉している原子が硫黄原子であることを証明するためにSe-Met置換したAf-Tthの結晶を作成し、硫黄の吸収端に近い長波長X-線による解析を行なった。この結果、3つのメチオニン残基が捕捉した原子は単一の硫黄原子であることが分かった。
本研究にて得られたAf-Tth結晶をSPring-8を利用したX-線照射実験で1.75オングストロームの解像度で結晶構造データを回収することができた。基質のテトラチオン酸を浸漬した結晶のX-線照射データの解析から本酵素の反応機構を推測した。Af-Tthは他の硫黄代謝関連酵素で見られるCys依存性の反応機構とは全く異なり、Asp325の基質へのプロトン供与による加水分解メカニズムであることを解明し、部位特異的変異酵素(D325N)の活性の消失からこれを証明した。
また、さらなるX-線結晶構造解析の結果、上記のAsp325付近から伸長する硫黄のオリゴマーと推定される電子密度、およびこれを捕捉する様な構造を持つ3つのメチオニン残基の存在を発見した。この3つのメチオニン残基は、本酵素における極めて特徴的な構造であり、他の好酸性微生物に由来する4THaseにも保存されている。まずはこのMet残基が捕捉している原子が硫黄原子であることを証明するためにSe-Met置換したAf-Tthの結晶を作成し、硫黄の吸収端に近い長波長X-線による解析を行なった。この結果、3つのメチオニン残基が捕捉した原子は単一の硫黄原子であることが分かった。
- ID情報
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- 課題番号 : 17K08169
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論文
1-
Research in Microbiology 171(7) 281-286 2020年10月 査読有り筆頭著者責任著者