2018年4月 - 2023年3月
ゲノム編集と部位特異的修飾プラスミドを駆使したDNA損傷から変異誘発への詳細解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
DNA損傷を持ったままDNAポリメラーゼδとεがDNA複製を開始すると、DNA鎖の伸長が損傷部位で停止し、細胞死となる。しかし多くの生物の細胞では、損傷乗り越えDNA複製(TLS)とよばれる機構により、DNA複製を進めることができる。しかしそれにはたらくDNAポリメラーゼ(Polη、κ、ιなど)の忠実度は低く、突然変異を生じさせる。DNA損傷の種類によってはたらくTLSポリメラーゼの種類は異なるが、損傷の種類とはたらくTLSポリメラーゼの関係は明らかでない。我々はCRISPR/Cas9法によってヌクレオチド除去修復を欠損するヒトの色素性乾皮症(細胞)を用いてTLSポリメラーゼを欠損した細胞(ΔPolη、Δκ/PIP、ΔPolι)を作製した。
これまで、これらの細胞に3ーアミノベンズアントロン(ABA:NBAの代謝活性体)、紫外線(UV)、シスプラチン(CisPt)を処理後、コロニー形成法によって、ΔPolηXP細胞がこれらに対し他の細胞より高感受性となることを明らかにした。また、NBA付加体をLacZ遺伝子中のグアニンに1分子もつSupFシャトルベクターを作製して、TLSが細胞中で起こると大腸菌コロニーの色が付くシャトルベクター系を作製した。これを用いてΔPolηXP細胞とXP細胞における突然変異頻度を比較した結果、Polηが欠損すると突然変異頻度が有意に上昇した。これらの結果から、PolηがNBA付加体の突然変異生成に寄与していることが示唆された。
今年度は、グアニンへの結合部位が異なる複数のNBAーグアニン付加体(dG-N-ABA、dG-C8-N2-ABA)を1分子持つSupFシャトルベクターを作製し、各種DNAポリメラーゼ欠損株(ΔPolη、Δκ/PIP、ΔPolι)で複製させた結果、dG-C8-N2-ABAが最もシャトルベクターの複製率を低下させた。dG-C8-N2-ABAには主にPolηがError-free TLSに関与することがわかった。
今後、NBA付加体化学構造とPolηとのより詳細な関係、および他のTLSポリメラーゼの寄与を明らかにする予定である。
これまで、これらの細胞に3ーアミノベンズアントロン(ABA:NBAの代謝活性体)、紫外線(UV)、シスプラチン(CisPt)を処理後、コロニー形成法によって、ΔPolηXP細胞がこれらに対し他の細胞より高感受性となることを明らかにした。また、NBA付加体をLacZ遺伝子中のグアニンに1分子もつSupFシャトルベクターを作製して、TLSが細胞中で起こると大腸菌コロニーの色が付くシャトルベクター系を作製した。これを用いてΔPolηXP細胞とXP細胞における突然変異頻度を比較した結果、Polηが欠損すると突然変異頻度が有意に上昇した。これらの結果から、PolηがNBA付加体の突然変異生成に寄与していることが示唆された。
今年度は、グアニンへの結合部位が異なる複数のNBAーグアニン付加体(dG-N-ABA、dG-C8-N2-ABA)を1分子持つSupFシャトルベクターを作製し、各種DNAポリメラーゼ欠損株(ΔPolη、Δκ/PIP、ΔPolι)で複製させた結果、dG-C8-N2-ABAが最もシャトルベクターの複製率を低下させた。dG-C8-N2-ABAには主にPolηがError-free TLSに関与することがわかった。
今後、NBA付加体化学構造とPolηとのより詳細な関係、および他のTLSポリメラーゼの寄与を明らかにする予定である。
- ID情報
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- 課題番号 : 18K11656
- 体系的課題番号 : JP18K11656