2019年6月 - 2022年3月
分子雲/原始惑星系/彗星で生成する核酸塩基構造異性体は生命の進化に寄与したか?
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
アミノ酸と核酸塩基は共に生命に必須の生体高分子である。アミノ酸は、隕石でも地球の生物と同様のキラリティの偏りが検出されており、またその前駆体も分子雲・星形成領域で観測されていることから、宇宙起源の可能性についても広く議論されている。一方で核酸塩基については、隕石からも検出はされているものの、宇宙での生成過程は未解明となっている。核酸塩基には、リボ核酸(RNA)やデオキシリボ核酸(DNA)内のヌクレオチドを構成するアデニン(A)やグアニン(G)などのプリン塩基、シトシン(C)、チミン(T)などのピリミジン塩基が存在する。本研究では、比較的温度の高い原始惑星系円盤や彗星などの環境を想定したプラズマ放電により、生成される核酸塩基を含めた生体高分子の形成過程を探るため、ダストプラズマのミリ/テラヘルツ分光診断システムを開発し、計測のアルゴリズムも改良して、ラジカルを含めた微量分子のスペクトルの検出に成功した。また、形成過程を探索するため、ポテンシャルの非調和下方歪みを利用した超球面探索法SHS・非調和歪追跡法ADDFを実装した量子化学計算を実施した。さらに、形成された特殊な高分子の生命・環境への影響を調べるため、サルモネラ菌や大腸菌などの原核細胞/嫌気性生物や、真核生物/好気性生物のin vitroの動物培養細胞生物等を用いたDNAの損傷に伴う姉妹染色分体交換による染色体異常の観察やAMES試験などの突然変異原性試験を行い、実験条件を明らかにするとともに手法を確立した。また分光計測のためのTHzヘテロダイン分光素子の製作環境をクリーンルームに立ち上げた。
- ID情報
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- 課題番号 : 19K21885
- 体系的課題番号 : JP19K21885