2020年7月 - 2023年3月
ホルムアルデヒドがスーパーバルキーDNA鎖間架橋をつくる
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
マロンジアルデヒドがホルムアルデヒド(FA)とリジン側鎖のアミノ基と反応し1,4-dihydropyridine型のM2FAを作る。M2FAは環状構造からなり、外環に2個のアルデヒド基を持つ。そこで、FAあるいは精製したM2FAをそれぞれ塩基と反応させ付加体が検出されるか否かをHPLC-UVを用いて検討した。FAはこれまでの報告と同様塩基との付加体を作ることが明らかになった。一方、M2FAと塩基との付加体は検出されなかった。恐らくM2FAの外環のアルデヒド基は蛋白のアミノ基とは反応するもののDNAの塩基のアミノ基とは反応し難いものと考えられる。そこで、生体内に存在する可能性があるFA以外のアルデヒドによるDNA鎖間架橋(ICL)の形成メカニズムとその生物学的重要性について実験を行った。ターゲットのアルデヒドはグリシドアルデヒド(GALD)である。グリシドールが体内の代謝を受けて2官能基を持つGALDが作られ、さらにICLを作る可能性があると仮説を立てた。 グリシドールはエポキシド構造をもつプロパノールである。ヒトは、職業暴露に加え、食用精製植物油や電子タバコのべーパーを介してグリシドールに暴露されている。グリシドールとアルコール脱水素酵素(ADH)の反応物中にアルデヒド基を持つ化合物が存在することをHPLCを用いて確認した。また、グリシドールとADHの反応によりGALDが産生されていることを質量解析にて確認した。GALDを培養細胞に曝露したところ、グリシドールと比較し細胞毒性が著しく高くなること、さらにGALDの暴露によって、野生型細胞と比べファンコニ貧血経路欠陥細胞で細胞生存率が低下したことから、GALD はDNAにICLを形成していると考えられた。また、GALDの解毒に関与する可能性のある酵素の機能不全マウスを作製することに成功した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K21850
- 体系的課題番号 : JP20K21850