1989年以降,県以上工業の環境汚染物排出量は停滞ないし減少傾向であるが,郷鎮工業の排出量は顕著に増加している。大気汚染物は主に建築原材料等製造業や電力・ガス・蒸気熱水の生産供給業,水質汚濁物は製紙および紙製品業,食品・タバコ製造業および重化学工業など,固体廃棄物は主に鉱業によって排出されている。また工業化ないし経済が進んでいる地域ほど,環境汚染物の排出量は高いが,工業総生産額当たりの排出量は低い。工業総生産額単位当たりの増加による廃気,二酸化硫黄,廃水およびCODの限界排出は,郷鎮工業より県以上工業の方が高く,煤じんは郷鎮工業の方が高い。石炭の消費増加による大気汚染物の限界排出は郷鎮工業の方が高いことが示された。また沿海地域と較べて,経済発展の遅れている内陸地域の産業構造は,環境汚染物の主な排出産業のウェートが高い特徴をもっており,今後の地域経済開発に当たって環境に比較的クリーンな産業構造への転換が重要な課題である。