2018年4月 - 2021年3月
外国軍隊による「支配」の現代的諸相が国際人道法に及ぼす影響に関する研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
2019年度の前半は、前年度に引き続き、国家が非国家主体を通じて外国領域を支配する「プロクシ」を通じた占領の実行および議論を、国際人道法の全体的文脈の中で検討することに費やした。国際人道法の適用において、国家が外国において行動する非国家主体に一定程度の支配を及ぼしている場合、武力紛争の国際化が生じるとされる。かかる非国際的武力紛争の国際化の敷居と、プロクシを通じた占領との関係が議論になるのである。判例上は、介入国による非国家主体に対する全般的支配は、当該非国家主体による「占領」を介入国自体による「占領」と見なしうると考えられているようにみえる。しかし、そのようなプロクシを通じた占領を、領域国との関係で、また被占領地域住民との関係でみた場合に、介入国が直接占領を行っているのと同一視できないという議論もある。この立場は、プロクシを通じて介入国が占領を確立するためには、紛争を国際化する介入国による非国家主体の支配(全般的支配)を越えるより強い支配が必要だと考えている。ただし、翻ってみれば、この立場は、保護・責任のギャップを生んでしまう可能性がある。また、このような立場の対立を注視することで、より根源的には、通説的に定着したと言われる「全般的支配」の基準が武力紛争の国際化を正当化するに十分なのか、果たしてそのような「全般的支配」により非国際的武力紛争はどの程度、どの範囲で国際化するのか、そもそも非国際的武力紛争の国際化とはどのような帰結を伴うのか、といった問題が実は明確な整理無く議論されていることも明らかになった。
2019年度の後半は、欧州人権裁判所の判例を検討し、占領状態の確立と人権条約の適用に必要な「管轄」の行使との関係について検討した。これにより、占領に必要とされる実効的支配の本質、特に国家による一般的な権力行使(人権条約の遵守義務を伴う)との関係を明確にしようと考えている。
2019年度の後半は、欧州人権裁判所の判例を検討し、占領状態の確立と人権条約の適用に必要な「管轄」の行使との関係について検討した。これにより、占領に必要とされる実効的支配の本質、特に国家による一般的な権力行使(人権条約の遵守義務を伴う)との関係を明確にしようと考えている。
- ID情報
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- 課題番号 : 18K01287
- 体系的課題番号 : JP18K01287
この研究課題の成果一覧
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論文
6-
同志社法学 73(3) 95-142 2021年8月31日
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国際法外交雑誌 120(1=2) 247-258 2021年8月
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同志社法学 72(7) 169-213 2021年3月
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浅田正彦、桐山孝信、德川信治、西村智朗、樋口一彦編『現代国際法の潮流II:人権、刑事、遵守・責任、武力紛争(坂元茂樹・薬師寺公夫両先生古稀記念論文集2)』 438-466 2020年11月 招待有り
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芹田健太郎・坂元茂樹・薬師寺公夫・酒井啓亘編『実証の国際法学の継承:安藤仁介先生追悼』(信山社) 907-944 2019年12月
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Israel Law Review 51(3) 365-388 2018年11月 査読有り
書籍等出版物
1-
有斐閣 2023年3月 (ISBN: 9784641046931)