共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2025年3月

マイクロ材料試験によるマルテンサイト組織鋼の疲労き裂伝播機構の解明と疲労強化設計

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(A)  基盤研究(A)

課題番号
20H00311
体系的課題番号
JP20H00311
配分額
(総額)
46,800,000円
(直接経費)
36,000,000円
(間接経費)
10,800,000円

本年度は、目的とするラスマルテンサイトの階層組織から選択的に微小CT試験片を採取し、疲労き裂伝播試験及びき裂伝播を直接観察できる計測法の開発を行うとともに、単一構成組織要素(単一パケット)における疲労き裂伝播挙動を調査した。
試料には炭素を0.2~0.5%含有する低炭素鋼を全面ラスマルテンサイト組織にしたものを用い、微小試験片が採取できる厚さ50μm程度まで研磨し、電子線後方散乱回折(EBSD)法により組織観察を行い、試験片採取位置を選択後、微細レーザ加工機及び集束イオンビーム加工機を用いて、微小CT試験片を作製した。また、本試験片に対して疲労試験が行える試験機及びレーザ顕微鏡により疲労き裂伝播過程を直接観察できる試験機の開発を行った。
次に、き裂先端が一つのパケット内となるように作製した微小CT試験片に対して、き裂の進展方向と晶癖面(ブロック界面)の角度を変えて、疲労き裂伝播試験を行い、き裂伝播に及ぼす晶癖面及びブロック界面方位の影響を調べた。その結果、疲労き裂の伝播方向はブロックの方位(晶癖面の方位)によって大きく変化し、疲労き裂の進展方向と晶癖面が平行なときには、き裂はブロック界面と平行(荷重負荷方向と垂直方向)に伝播した。また、き裂進展方向が晶癖面と45度の場合、き裂は晶癖面と平行(すなわち、荷重負荷方向から見るとと45度の方向)に伝播した。き裂進展方向がブロック界面(晶癖面)と垂直になるときには、き裂はブロック界面に沿って少しだけ進展し、その後ブロック界面を横切って晶癖面と垂直方向に伝播するという過程を繰り返しながら、マクロ的には荷重負荷方向と垂直方向に伝播した。また、このとき裂伝播抵抗が最大となった。このようにラスマルテンサイトの一つのパケット内における疲労き裂伝播挙動は、ブロック界面(晶癖面)の方位に大きく依存して変化することが明らかとなった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20H00311
ID情報
  • 課題番号 : 20H00311
  • 体系的課題番号 : JP20H00311