共同研究・競争的資金等の研究課題

1994年 - 1996年

深海掘削試料解析・孔内計測による海洋底の構造と進化の研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 国際学術研究  国際学術研究

課題番号
06044051
体系的課題番号
JP06044051
配分額
(総額)
32,600,000円
(直接経費)
32,600,000円

平成8年度の成果については以下のようにまとめることができる。
1)海水準変動と炭酸塩プラットフォームにおける地層の形成
炭酸塩プラットフォームを構成する地層の形成には海水準の変動が大きな役割をはたしていると考えられる。1980年代に地層の形態と海水準変動の関係がモデル化され、シーケンス層序学というあたらしい分野ができ、地質時代を通じての海水準変動の歴史や化石燃料の深鉱などに貢献をしてきた。
しかし、炭酸塩プラットフォームからさらに海底扇状地まで全体の地層の形成と海水準の関係は明らかにされておらず、シーケンス層序学はきわめて不完全なものであり、それにもとづく海水準変動史にも多くの疑問がなげかけられていた。本研究では、この問題の解決のために大西洋バハマ堆(バンク)で掘削をおこなった。その結果、バンクのブログラデーション,アグラデーション,ハイアタスなどの発達と海水準のイベントを対比することが可能となり、シーケンス層序学や堆積学に大きな貢献をした。
2)カルフォルニア沖掘削による氷河時代の地球環境の高分解能復元
近年、氷床の掘削により、ダンスガード・オシュガ-サイクルと呼ばれるような、数10年間に極域の上空温度が7℃も上昇するようなイベントが発見されてきた。一方、深海掘削により、ハインリッヒイベントのような北大西洋全域にわたる氷山の運搬した砂やレキの堆積イベント(おそらく氷床の大崩壊をあらわす)がしられるようになった。本研究では、これらの記録の時間スケールと前後関係そしてグローバルなイベントかどうかを明らかにするためにカルフォルニア沖,サニッチインレットで掘削を行ない、氷河時代の気候変動には、さまざまな時間スケールのイベントが混在していること(1000年、数1000年、数万年周期で、急激な変動が数10年から数100年で起こる)、しかし、その多くが非対称な変動(急速な温暖化と比較的ゆっくりした寒冷化)からなりたっていることを示した。またそれに伴って珪藻などの生物群集の入れ代わりが起こっていることもわかってきた。
この気候変動の理由については、多くの気候学者が現在研究中である。
3)熱水循環システムの研究
本研究ではファンデフカ海嶺にて熱水循環の詳しい様式について長期温度水圧観測ステーション(CORK)実験装置を用いて孔内長期観測を主として研究を行なった。ここでは、温度と間隙水圧の長期変動をモニターして大規模な循環セルの存在と、リチャージ、ディスチャージ域の特定が行なわれ、循環システムの水理学に大きな貢献をした。
また、中央海嶺が堆積物で被覆された埋堆海嶺においては、はば数10m,長さ数kmにおよぶ巨大な熱水鉱床の存在が確認された。これは、鉱床の形成が堆積物の沈積を越えるスピードで起こっていることを示しており、熱水鉱床の存在量の推定にも大きな影響を与えるものであり、鉱床学に大きな貢献をした。
4)新しい孔内検層と付加体地質学
プレート沈み込み境界(デコルマン)での掘削同時検層技術(Logging While Drilling)がはじめて採用され大きな成功をおさめた。これは、掘削しながら同時に検層を行なうものである。また、バルバドス付加体では、長期温度水圧観測ステーション(CORK)による孔内温度圧力測定をおこなった。意外なことに、デコルマンにおいて温度異常がまったく計測されなかった。デコルマンで何が起こっているのか、謎が深まった。またコスタリカ沖で付加体の内部構造について研究が行なわれ、ここでは当初アンダープレーティングによる堆積物の付加が予想されていたが、実際には大規模にテクトニック侵食が行なわれていることがわかった。
以上のように本年度の実績は地球環境と海水準の変遷を中心に、熱水循環と鉱床の形成プレート沈み込みによる物質循環と地殻の形成に正面から取り組んでおり、着実に成果をあげてきた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-06044051
ID情報
  • 課題番号 : 06044051
  • 体系的課題番号 : JP06044051