共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

ヘテロカプサ赤潮はなぜ貝類のみをへい死させるか―不安定毒素の全容解明への挑戦-

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18K05809
体系的課題番号
JP18K05809
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

渦鞭毛藻 Heterocapsa circularisquama (以降,ヘテロカプサ)は,貝類に極めて強い毒性を発現する赤潮の原因種である。先行研究により,ヘテロカプサの毒素は膜タンパク質であると推定されたが,速やかに失活するため毒素の精製が困難である。そこで本研究では,毒性の異なるヘテロカプサ細胞の各種遺伝子発現量を比較して毒性発現に関わる遺伝子群を見出すとともに,毒素候補の一次配列からエピトープを人工合成・免疫して作製したポリクローナル抗体を用いた免疫学的研究によって本種による貝類へい死機構の解明を目的とした。
ヘテロカプサが産生する毒素候補の選抜を行うために,無菌化した強毒株と弱毒株のトランスクリプトーム解析を実施した。この結果,膜貫通領域を有し,かつ,強毒株で有意に(FDR < 0.01)高く発現している214個の膜タンパク質関連の遺伝子群を見出すことに成功した。また,これらのうち強毒株が有する溶血活性に関連する可能性のある複数の遺伝子群を確認することができた。さらに,シオミズツボワムシを用いたバイオアッセイの結果,無菌化した強毒株の毒性は対数増殖初期より定常期で高くなること,および窒素欠乏状態における毒性の低下が観察された。
一方,次年度以降に予定している毒素候補に対するポリクローナル抗体(以降,抗体)を用いた免疫学的研究を円滑に遂行するために,研究に用いたヘテロカプサ培養株での発現が確認された膜タンパク質であるNADPHオキシダーゼに対する抗体を作製して間接蛍光抗体法の条件検討を行った。この結果,作製した抗体は本種細胞表面に存在すると考えられるNADPHオキシダーゼを認識したことから,トランスクリプトーム解析で得られた配列情報を用いた抗体作製および免疫学的研究の円滑な推進に必要な条件等を確立することができた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05809
ID情報
  • 課題番号 : 18K05809
  • 体系的課題番号 : JP18K05809