共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

単色X線とナノ粒子を用いたがんの新規放射線治療

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(A)  基盤研究(A)

課題番号
20H00331
体系的課題番号
JP20H00331
配分額
(総額)
45,240,000円
(直接経費)
34,800,000円
(間接経費)
10,440,000円

ガドリニウム、ヨウ素、金や銀などの高Z元素にX線を照射すると光電効果によりオージェ電子の放出がある。オージェ電子は短距離しか飛翔せず低エネルギーであるが、DNA切断を引き起こし、がん細胞を殺傷する力が強い。この効果を用いて新規のがん治療を開発するための基礎研究を行うことが私たちの目的である。令和2年度の研究で、ガドリニウムを担持したナノ粒子をがんスフェロイドに取り込ませ、50.25 keVの単色X線を照射することで、がんスフェロイドがバラバラになり消滅することを明らかにしている。令和3年度はヨウ素担持ナノ粒子を合成し、がんスフェロイドに取り込ませ、単色X線照射によるがんスフェロイド破壊およびアポトーシス、DNA二重鎖切断を検討することにより、がんスフェロイド消滅のメカニズムを検討した。
合成したヨウ素担持ナノ粒子を卵巣がんの細胞から作られたがんスフェロイドに取り込ませた。その結果、がんスフェロイドを構成するがん細胞内にガドリニウムが取り込まれ、細胞核の近傍に局在した。SPring-8にて、ヨウ素担持ナノ粒子を取り込んだがんスフェロイドに33.2 keVの単色X線を照射した結果、がんスフェロイドがバラバラになり消滅することを明らかにした。また、オージェ電子によるDNA二重鎖切断が起きるかどうかを33.0, 33.2, 33.4 keVの単色X線を照射後、がんスフェロイドをγ2AXに対する抗体を用いて検討した。このとき、33.2 keVの単色X線照射で最も高いDNA二重鎖切断が起きていることを明らかにした。さらにTUNELアッセイによりアポトーシスを検討したところ、DNA二重鎖切断同様、33.2 keVで最もアポトーシスの割合が高くなることを明らかにした。この単色X線照射による効果は非常にシャープであり、高Z元素のK端エネルギーのところで強く効果が出ることを明らかにした。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20H00331
ID情報
  • 課題番号 : 20H00331
  • 体系的課題番号 : JP20H00331