共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2019年2月

教育改善奨励経費研究「数的および図形的な知識、技能、感覚が大学数学の学修に及ぼす影響の可視化と、学修指導への活用」

学内研究プロジェクト  

担当区分
研究代表者
資金種別
その他

(役割) 代表者,(成果報告等) 成果のポイントと補足説明,,【成果のポイント】,数的および図形的な知識と技能を問う簡単なテストと、大学で初めて学ぶ2変数関数の微積分学の期末試験の出来映えの関係を分析した。簡単なテストは、中学〜高校の数学の範囲であり、しかもやさしい問題である。大学1年生にとっては、テストというよりもむしろ、簡単なクイズと言ってよい簡単な問題である。,,簡単な問題(全16問)に関して18項目の観点で評価し、期末試験得点との相関を調べた。相関の大きかった8項目(または8項目の中の6項目)に着目し、数値「指標」を定義し、期末試験合格率と指標の関係を調べたところ、明確な単調関係が見られた。すなわち、簡単なテストの特定の問題ができるほど期末試験で合格点に達しやすいということである。,,中学〜高校数学の範囲の簡単な問題の解答から大学数学の合格率が予測できることは有用な知見といえよう。,,【補足説明】,大学生活の早い段階で学生の学修成果を予測し、教室内および自宅学習の指導に活かすことができれば、大学の学生に対するサービスの質の向上に貢献できるだろう。そのためには、教員の勘と経験に頼るだけでなく、予測の客観化が重要となるであろう。,,昨今の、教務情報のみならず、学生に関するデータが大量に蓄積されている状況を踏まえると、このような客観化のための機は熟している。しかしながら、データはあるが、どのような観点で手をつけて良いか分からないというのが現状であろう。,,この事業では、代表者が5年間蓄積したデータを用いて、教育へのデータ活用の可能性を検討した。中学〜高校〜大学にわたる数学の枠内のコンパクトな分析課題を設定し、簡単な知識や技能が大学数学の学修成果に影響を及ぼしているかどうかを検証した。,,その結果から、遅くとも高校1年生までには身についていると思われ、一見したところ大学数学とは縁遠い簡単な問題が、大学数学の学修成果に結びついている可能性が示唆された。逆にいえば、大学生にいまさらこのようなことを教えても仕方ないと思われることを、必要とする学生に身につけさせることにより、大学の学修が促進される可能性があるということである。,,この事業の当初の目標と対比すると、これまでの分析はまだ一部に過ぎない。しかしながら、今回、少なからぬ有効サンプルがデータ化でき、データ化が有効であることを示すことができたことは一定の成果と言ってよいであろう。今後、この観点での分析を深めるとともに、大学数学の期末試験の各問まで立ち入った分析を進めれば、大学数学の学修に影響する基礎について複数の新たな知見が得られるであろう。ひいては、数学の枠を越えた分析へとつながるかもしれない。