1996年6月
N・ドラマール『ポリス概論』と「教育」-18世紀フランスにおける統治理論と家族
東京大学大学院教育学研究科『紀要』
- 巻
- 36
- 号
- 開始ページ
- 81
- 終了ページ
- 90
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
近代行政学の祖型とも言える、フランス・ポリス学の集大成、N・ドラマール『ポリス概論』(1705-1738)を分析した。総頁数二千頁を越えるこの浩瀚な書物は、古代から18世紀にいたる広大なポリス領域-宗教、習俗、健康、食糧、治安、学芸、商工業、使用人、道路、貧民-を網羅する興味深い史料である。本稿では、その総論部分における教育観、家族観、子ども観を中心に分析を加えた。「家族は国家の苗床である」という記述からも分かるように、近代ポリス論とは家族=小国家という思想に貫かれた教育国家論そのものであり、「不寝番」に示される細心の注意と懲治をその広範な領域すべてに行き渡らせようとした教育的機能を行政の柱に据えた議論なのである。