北東アジアにおけるリスクの多様性と相関性について、国際関係・国際政治および経済社会・文化・歴史の諸側面から分析した。国際政治での伝統的な課題である軍事安全保障では、東アジアでの国家間関係と米国とロシア共和国の競合関係とがせめぎ合いを続けている。北東アジアでの環境や人的移動といった越境的な課題は、国家間だけでなく社会のさまざまなレベルでの協同を要請している。環境問題は、東アジア諸国における経済成長の負の側面でもあり、とくに中国の急速な経済成長は中国国内での都市化にともなう環境問題にとどまらない。むしろ、大気汚染や地球温暖化問題を加速させている点で、早急な対応が不可欠な課題であり、近年では東アジア諸国の政府間の環境協力には一定の進展がみられる。しかし、経済面での交流と相互依存が深まっていく一方で、社会開発や経済発展での格差の存在が近未来の予測不可能性を強めていることが、この北東アジアにおける社会的リスクの深化の根源である。また、歴史観・文化アイデンティティ形成についても大きな隔たりとばらつきがあることが、地域協力を通じた社会的リスクへの対応の遅れに繋がっている。北東アジアでは20世紀の歴史についての認識を共有するに至っておらず、このことが、地域間協同への阻害要因ともなっている。本研究成果を踏まえ、新たに「北東アジアにおける社会的公正=フェアガバナンスの探求」(基礎研究(B))とし...