講演・口頭発表等

2021年3月14日

みんなで楽しむイチモンジタナゴ三重県在来個体群の生息域外保全

第72回魚類自然史研究会
  • 北村淳一

記述言語
日本語
会議種別
その他
主催者
魚類自然史研究会
開催地
Web
国・地域
日本

イチモンジタナゴ Acheilognathus cyanostigma は,コイ科タナゴ亜科に属する純淡水魚で,平野部の川や湖沼,ため池に主に生息し,国のレッドリストで絶滅危惧 IA 類に選定され(環境省,2020),最も絶滅が危ぶまれている淡水魚類の 1 種である.本種は,ため池など止水域に生息するミナミタガイなどの生きたカラスガイ族貝類の鰓内に主に産卵し,さらに,それらカラスガイ族貝類への産卵と定着のための適応と考えられている完熟卵保有時の長い産卵管長と,長楕円形である卵形の特異的な特徴を持つことから(Kitamura, 2006),ため池で持続的に再生産することのできる止水適応種であるとされている(北村・内山,2020).三重県松阪市のため池に生息していたイチモンジタナゴは,ミトコンドリア DNAにおいて,瀬戸内海集水域の個体群とは異なる固有の塩基配列を持っていたことから(北村,2016),現在では,現存する唯一の伊勢湾集水域固有の個体群であると考えられている.2002年の発見当初から,生息地を持つ地元自治会の住民を中心に組織された NPO 松阪モロコの会により,本種とともにその地域に生息する希少淡水魚類のカワバタモロコやミナミメダカ,ホトケドジョウとともに周辺のため池群への生息地復元活動や水槽内での保護飼育(北村,2016;北村・鈴木,2016),および伊勢湾集水域にある鳥羽水族館や世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふで保護飼育展示が行われてきた(堀江,2020).今回,さらに,危険分散のため,保護飼育や人工増殖に強い関心のある愛好家達が自宅で実施する生息域外での保護飼育や増殖による系統保存の取組を開始したので報告する.

引用文献
堀江真子.2020.保全池からきたイチモンジタナゴ.おもしろ飼育コラム.世界淡水魚園
水族館アクア・トトぎふホームページ.https://aquatotto.com/blog-diary/detail.php?p=10614
(2021.3.14 参照).
Kitamura J. 2006. Reproductive ecology of the striped bitterling Acheilognathus cyanostigma
(Cyprinidae: Acheilognathinae). Ichthyological Research, 53: 216-222.
北村淳一.2016.イチモンジタナゴ:地域とともに将来につなぐ.淡水魚保全の挑戦 : 水
辺のにぎわいを取り戻す理念と実践.渡辺勝敏・森誠一編.平塚,pp. 147-160.
北村淳一・鈴木規慈.2016.三重県のカワバタモロコ Hemigrammocypris rasborella の現状
と保全.三重県総合博物館研究紀要,2:65-67.
北村淳一・内山りゅう.2020.日本のタナゴ : 生態・保全・文化と図鑑.山と溪谷社.東
京.p. 223

リンク情報
URL
http://gyoruishi.blogspot.com/2021/03/72.html
URL
https://drive.google.com/file/d/1agUE1_8uLDOmeaEOP99H49xszU7-3qq8/view?usp=sharing