2006年5月
マルグリット・デュラス『モデラート・カンタービレ』―問うこととしての物語
日本フランス語フランス文学会春季大会
- 記述言語
- 日本語
- 会議種別
- 口頭発表(一般)
- 主催者
- 日本フランス語フランス文学会
- 開催地
- 慶應義塾大学
デュラスのテクストには、連作や同一テクスト内の類似的物語など反復的要素が多く見られる。本発表では、作家が反復を通して何を示そうとしていたのか、なぜ同様の物語は二度描かれなければならなかったのかという問いから出発し、分析を試みている。物語は本来一度語られれば読者に満足を与える。二度繰り返されるのはおとぎ話の常套句としても、小説としてはむしろ既視感を与えることで冗漫な印象を残してしまう。しかしデュラスは積極的に物語の反復を描き続けた。このとき反復された物語は、雛形となる物語との差異をテクストにもたらしている。この差異化による物語への批判的思考こそ、テクストの創造性へとつながることを指摘している。