症例は44歳男性で、左側頬部の腫脹で近医受診、左側上顎臼歯部の頬側歯槽部の軽度骨膨隆と左上7番に2度の動揺を認めた。パノラマX線で左側上顎洞の不透過性亢進、上顎結節部の骨吸収像、CTでは左側上顎洞に充満する病変、鼻腔側壁の膨隆と眼窩底から上顎洞側壁と後壁にかけて部分的な骨吸収像を認め、上顎腫瘍の診断で生検を行った。上顎洞内に多量の黄色で粘稠性の乾酪様物質を認め、洞粘膜を含めて一部を切除した。結果は良性末梢神経鞘腫であり、患者希望で経過観察とし、約半年後全身麻酔下にCaldwell-Luc法に準じて左側上顎腫瘍摘出術を行った。左上1番から左上7番の歯肉頬移行部に切開を加えて粘膜骨膜弁を挙上し、病変を一塊に摘出した。腫瘍の眼窩底への浸潤は認めず、摘出欠損腔に抗菌薬を塗布したガーゼを留置して創部を一時閉鎖した。病理診断は細胞性神経鞘腫であった。術後眼窩下神経領域の異常は認めず、2年経過で再発は認めていない。